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タイトル |
サブタイトル |
内容 |
音の理解 |
サインカーブによる音の理解 |
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音量=振幅・振動数=音程・波形=音色 |
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音程 |
2人以上の音は、波の足し算(合成波) |
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互いの音で助け合い、足の引っ張り合い |
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きれいな音は見た目もすっきり |
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バンドの音には3つの時代がある | きれいな空気の作り方 | |
コマを回すと音程が目で見える | 音程のずれを簡単に目で見る方法! | |
差音(さおん)ってなに? | 完璧な音程は、地獄の悪魔にも祝福される! | |
差音と練習 | チューニングや練習への差音の利用 | |
チューニング |
チューニングは音程を合わせるのではない |
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チューナーは楽器の癖を見抜く道具 |
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基準音とその他の音の関係 |
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うなりと周波数の関係 |
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まっすぐな定規はふにゃふやしている |
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調が変わっても、階段は変わらない |
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頭の中の音に合わせる |
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出だし以外の音程を合わせるのは、チューニングではない |
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音色(波形)と倍音のなせる業 |
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2分以内でバンド全体のチューニング! |
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音形 |
音を常に目で見て確認! |
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慣性の法則を理解する |
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スカスカの弁当おかずは、ぐちゃぐちゃになる |
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いい女は後姿が美しい・・・ん? |
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リリースの大切さ② | いい音といい女は、後姿が美しい!! | |
正しい音形は豊かな響きの原因! |
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音符がオタマジャクシだから下手になる! |
音符の形と正しい音形の話 |
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音色 | 倍音が多い音ってどんな音? | あまりにも適当な「倍音」の理解 |
倍音にも2種類ある! | 「整数次倍音」と「非整数次倍音」の話 | |
倍音をコントロールする! | とても大切な余談です! | |
よい音の出し方① | 整数次倍音と非整数次倍音の出し方(?) | |
よい音の出し方② | 楽器の材質やメッキ・小物の影響 | |
無い楽器の音は、こうすれば聞こえる! | 大事なのは音程、あとは実験あるのみ! | |
和音 |
難しいことは抜きにしましょう |
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完全音はきれいな素肌、3音は化粧 |
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倍音と共鳴 |
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人間の錯覚と響きの絶妙さ |
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音の長さとフレーズ |
音は短くても長く聞こえる! |
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上手い人ほどよくサボる |
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ダメな曲は白いパンツを履いている! |
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植物が教えてくれるフレーズ感 | 音の長さややフレーズ感を間違うと曲は枯れちゃうよ! | |
速くて細かな音符は「きゃりーぱみゅぱみゅ」 | きゃりーぱみゅぱみゅがあなたのバンドを上手くする! | |
音の流れとテンポ |
じいちゃんのカラオケは、出だしが合わない! |
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音を表しているのは音符じゃない! |
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テンポが揺れる曲での出だしはどこ? | 打点のない指揮は「あんだがたどこさ! | |
世界中のメトロノームは間違っている? | メトロノームは見ちゃいけない!! | |
音速と響きなど |
音は遅い!同じタイミングでは出だしは合わない! |
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ホールの温度と音速の関係 |
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音の方向性 | 同じ水量であれば、広い川より狭くてまっすぐな川の方が流れが速いでしょ? |
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きれいな音(澄んだ音)と音程の関係 きれいな音は見た目もすっきり
上手いバンドの音は、大きいだけではなく、非常に澄んで緊張感に満ち溢れているとは思いませんか?特にppの時など、背筋がぞくぞくするほど音が澄んで聞こえます。これには様々な要素が考えられますが、その1番の原因は、やはり音程と波形、つまり音色です。 グラフの真ん中(X軸)周辺に見られる小さな波が、個人個人の音です。音程が合っているときには、個人個人の波が完全に重なり合うために、非常にすっきりしていますよね。これが「澄んだ音」の原因です。この澄んだ感じは、ホール内の空気に直接伝わるため、聴衆に緊張感をももたらします。一方、音程が合わないほうのグラフでは・・・それぞれの音がごちゃごちゃに入り乱れ、なにがなんだか分からない状態になっています。これでは澄んだ音がする訳がなく、当然の事ながら緊張感などもありえないですよね。 お互いの音、つまり波形をどうやって似せていくかは、またあとで書いてみます。 |
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バンドの音には3つの時代がある きれいな空気の作り方
音程が合わないバンドの音を聞くと、真っ赤な顔をして懸命に吹いていてもホール内にはほとんど響かず、音量は小さいのにうるさく耳が酷く疲れる・・・。そんなバンドの音は下図の最初のようになっています。音程も音量も常に安定せず、ほとんどのタイミングでお互いの音を消しあってしまうため、音量が小さく響かないように聞こえます。ところがたまたま偶然にお互いの音の波長が合ってしまうことがあって(音程が合うバンドは常に合うのですが)、その瞬間だけホール内に音が飛んできてしまいます。ちょうど大きめの入れ物に水を入れてそーっと運んできたのに、何らかの瞬間に水面の波が急に大きくなり「パシャ!」と顔にかかってしまう感じです。そんなことが不定期に起こるものだから、音量が小さいのに好評で「うるさい!」と書かれてしまうのです。知識のない指導者はそのコメントを真に受けて、それ以降音を小さくするよう努力してしまいます・・・。最悪!
「音程が合う!」という現象をきちんと理解できてくると、はじめは図の真ん中のように、2人以上の合奏の時に音の線が見えてくるようになります。これは音程がかなりあってきた証拠です。指導者の方や上級生の方などは、この線が見えてきたら、まずは沢山ほめてあげましょう。たとえそれがほんの瞬間的なことであったにせよ、「音が合う!」ということを全員で共有できた瞬間でもあるのですから。
そしたら次の段階として、その線がすべての音で見えるようになるよう努力しましょう。ある程度線が見えるようになったら(音程が合うということを実体験として感じられるようになったら)、全部の音で線が見えるようになるのは難しいことではありません。そして・・・
この線にこだわっているうちに、ある音については、線が全く見えないのにものすごく大きく美しく感じられる瞬間があることに気づくはずです。これが3つ目の図の状態。これは単純に出ている音の音程が合っているだけではなく、同時に作られている数多くの倍音がすべて合っている状態です。こうなると空気は澄み渡り、どんなに響かない部屋でも音は限りなく天に向かって響いていきます。曲に出てくるすべての音でこんなきれいな空気が作れたら・・・天にも昇るほど感動するはずですよ。奏者も観客も!
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こんな柄(がら)のコマを回すと・・・ | 最初、模様が見えないが・・・・ | しだいにゆっくりになり一瞬止まる |
照明が点滅していることは、鉛筆1本で確かめられます!照明の下で鉛筆を素早く左右に振って「ほら、鉛筆が何本かに見える!!」なんて遊びをしたことはありませんか?あの現象は、鉛筆に照明が当たった時にだけ鉛筆が光を反射するために起こる現象なのです。太陽光の下で同じことをすると、鉛筆は何本かには見えないはずので、実験してみてください。もし太陽光の下でも鉛筆が数本見えたとしたら、あなたを照らす太陽が点滅しているということです(笑)。
話を本題に戻しますが、コマを回した瞬間からコマの回転速度が落ち始め、やがてその回転数が照明の点滅速度の整数倍かその逆数倍(1/整数 倍)になります。つまり、眼下にくるコマの柄の変化(周波数)と照明の点滅数(周波数)の関係が、整数倍(または逆数倍)の関係になるわけです。この状態になった瞬間に、回っているコマの模様が止まります。
ここで、「音が合う」というのはどういうことだったか思い出して下さい(忘れた方は、「音が合う(合わない)ということ」を復習してください!)。音が合うという状態は、それぞれの音の波どうしがきちんと重なり合う状態でしたよね。つまり、「照明の下でのコマの模様が止まる=音が合った状態」ということなのです!!
回転速度がしだいに減少していくということは、周波数が下がっていくということと同じですから、コマの模様の変化と音が合うという状態を比較してまとめると、次のようになります。
①回っているコマの模様が少しずつゆっくりになる = やや高い音から少しずつ基準音に近づきながら、音程が少しずつ下がってきている状態
②コマの模様が止まる = 音程がぴったり合った状態
③コマの模様が再び動き始める = 音程を下げすぎて「うなり」が生じ始めている状態
つまり、照明の下でのコマの模様の変化は、少し高めの音からチューニングをはじめ、一瞬音程が合うんだけどそれを通過して音程を下げていく状態・・・という感じに説明できると思います。
ピッチの合わないバンドを演奏を聴くと、大した音量でもないのに耳がつかれ、何をやっているのかよくわからないものです。この状態は、動いているコマの模様が認識できないほどピッチがずれている状態です。
また、pでもfでも音がとてもクリアで、プレーヤー一人ひとりの音もはっきり聞こえ、ホールの空気が澄み切っているバンドの演奏は、コマの模様がしっかりと見え、それが常に維持されている状態(コマの回転数が減少しない状態)なのです。
この状態を維持し続けるためには、摩擦や空気抵抗に負けないよう、コマに少しずつ力を加えてやらなければなりません。上手いバンドは、プレーヤー全員が、この力を音に加え続けているのです!!!
1Hzずれれば1秒間に1回、4Hzずれれば4回の「うなり」が生じますが、音がものすごくずれて、1秒間に何十回も「うなり」が生じたら、いったいどうなるのでしょう?? ...
2人で同じ音を演奏する時、音程が完全に合えば(周波数が全く同じであれば)音量は2倍になり、少しでも周波数がずれれば、ずれた分だけ「うなり」が発生する!このことは理解されていると思います。今回は、この逆の発想で音程を考えて行きます。
「和音」という言葉はご存知ですよね。「和」という漢字には、「足し算の合計」という意味があり、数学では、足し算の答=「和」、引き算の答=「差」、掛け算の答=「積」、割り算の答=「商」という言葉を使うことがあります。和音が「足し合わせた音の合計」であるならば、2つ以上の音の「差」を音として考えるのが「差音」です。
話を簡単にするために、今回は基準音を100Hzにし、この音を「ド」と呼んで説明しますね(実際に100Hzは、大体ピアノのソ(G)とソのシャープ(G♯)の間くらいの音程です)。
①2人がぴったり100Hzのドの音を出せば、うなりは生じず、ドの音量が2倍になって聞こえます。
②1人が100Hz、もう1人が101Hzの音を出せば、101Hz – 100Hz = 1Hzとなり、ずれた分が「うなり」となって聞こえます(つまり1秒間に1回の「うなり」が聞こえます)。
③すごく音がずれて、1人が100Hz、もう1人が110Hzの音を出せば、110Hz – 100Hz = 10Hz となり、1秒間に10回の「うなり」が聞こえます。
ところがこれ以上「うなり」が細かくなると、人間の耳は「うなり」を「うなり」としては知覚できなくなります。その代わりに、細かすぎる「うなり」を「音波」として知覚してしまうのです!
つまり「うなり」という名の、小さな音として感じてしまうのです!!!
その結果がどうなるか、考えてみましょう。
{2人の音が1オクターブ違う場合}
100Hzの「ド」の1オクターブ上の「ド」は200Hzですから、200Hz – 100Hz = 100Hz となり、下の「ド」(100Hz)と同じ音程の「差音」が生じます。つまり下の「ド」が、差音によって増幅されます。
{2人の音が2オクターブ違う場合}
100Hzの「ド」の2オクターブ上の「ド」は400Hzですから、400Hz – 100Hz = 300Hz となります。300Hzは、基準音100Hzの「ド」に対して1オクターブと完全5度上の「ソ」に当たります。同じ音を演奏しているのに、「完全5度」の「差音」が生じ、響きが更に豊かになります。
{100Hzの「ド」に対し、完全5度上の「ソ」を鳴らした場合}
100Hzの「ド」の完全5度上の「ソ」の周波数は150Hzですから、150Hz – 100Hz = 50Hz となり、100Hzの「ド」の1オクターブ下の「ド」の「差音」が生じます。つまり100Hzの基準音が、1オクターブ下からも支えられ、響きがより重厚になります。
{100Hzの「ド」に対し、長3度上の「ミ」を鳴らした場合}
100Hzの「ド」の長3度上の「ミ」の周波数は125Hzですから、125Hz – 100Hz = 25Hz となり、100Hzの「ド」の2オクターブ下の「ド」の「差音」が生じます。つまり100Hzの基準音が、2オクターブ下からも支えられ、やはり響きがより重厚になります。
以前、「完全に音が合うと、その音だけではなく、お互いの音の倍音どうしまでもが重なり合い、音がどこまでも高く高く響き渡っていく・・・」という話をしたかと思いますが、実は音は1オクターブ・2オクターブ下でも響きあうということが分かってもらえましたでしょうか?
だから上手いバンドの音は、同じ音量で演奏しても、上から下までよく響くのです!!
綺麗な音が好きなのは、天使だけではなく、地獄の悪魔でも同じということですね~!
綺麗な音を聴くと、天使と悪魔の両方が協力し合って、音を更に美しく響かせてくれるということです♪♪♪~
リンク先は、「うなり」の回数がだんだん多くなり、「差音」に変わっていく様子がとてもよく分かる動画です。是非ご覧ください!!!
せっかく生じた差音なのですから、日頃の練習に利用しない手はありません。そこで、チューニングと日頃の練習への利用法を考えてみましょう!
{理想的なチューニング?}
私は普段から、「チューニングなんて1人1秒で充分」と思っている人間なので、その方法についてはごちゃごちゃ言う気がないのですが、チューニング前にハーモニーディレクター等から出す基準音について、コメントしたいと思います。
あまり上手ではないバンドでは、チューニングの間中、ハモデからずーーーーーーーーーっとチューニングB♭の単音を鳴らし続ける光景が見られがちです。無意味だし、うるっさい・・・。
私はチューニングの際、これまでB♭と完全5度上のFの音を鳴らすようにしていました。これはあるバンドさんの真似なのですが、単音でB♭を鳴らすより、チューニングの精度が高くなるような気がしていたのです。もしそれが本当なのであれば、理論的には前回説明した{100Hzの「ド」に対し、完全5度上の「ソ」を鳴らした場合}に生じる差音(1オクターブ下のB♭)のおかげかもしれません。
また「差音」的に考えると、鳴らしてはいないFの音が聞こえるように、2オクターブ違うB♭の音を出すのがいいのかもしれません。こちらは実験したことがないのですが、そのうち機会があればやってみたいと思います。
{練習への利用}
私は、正しい音程を身につける方法として、いつも「ペア練習」をお勧めしています。ロングトーン・スケール・リズムなど、色々な内容の決まった課題を常に2人で練習させ、それを「基礎合奏」の内容としても使えるよう、楽譜を作っています。この「ペア練習」段階において、最初は同じ楽器・パート内でやってもらうのですが、慣れてきたら、ありとあらゆる楽器どうしでペア練習ができるよう、組み合わせ表を作ってもらいます。毎日、別の相手とペア練習することで、人間関係が良くなる意味合いも大きいのですが、「差音」の視点から考えると、違う音域の楽器どうしのユニゾン練習は、ものすごい効果がありそうですよね!
例えば「ピッコロとB♭バス」なんて組み合わせもあるわけですが、この場合、3オクターブの音域の違いがあるので、2人でチューニングB♭を鳴らした場合、差音には、ピッコロのチューニングB♭の長2度下のAsの音が聞こえるはずです。この差音まで完璧に合ったら、かなりの精度ですよね!
{その他}
「差音」のことは直接言わなくても(あまり面倒なことを言うと、興味がない人は引いてしまうので)、合奏中に音が完全に合った瞬間、部屋内が突然に「ものすごくよく響くホール」や「教会内」のように感じられることがありますよね!その瞬間を逃さず、「今、完璧に音が合って、低音から高音までものすごくクリアに響いたよね!」と言ってあげると、それだけでバンドの意識や目指す音が見えてくるはずです。
そのついでに、「実は、今のはみんなの楽器から出ている音と倍音と差音が、完全に合ったんだよ!すごいすごい!!」とほめてあげると、次の瞬間から、みんながその音をもう1度出したいと意識し始めるようになります。
本当ですよ! だって、その瞬間って演奏してて、ものすっっっっっごく気持ちいいんですから・・・。
世の中の音の基準は、A(440Hz、ピアノのラの音)を基準にすると、1939年にロンドンで行われた国際会議で決められました。これが理由なのか、弦楽器の開放弦にAの音が多いためなのか、オーケストラでは基本的にAの音でチューニングします。吹奏楽では、B♭の音でチューニングする場合が多いですが、これは単純にB♭管の楽器が多いからです。
でもそんなことはどうでもいいとして、今、皆さんのバンドがB♭の音でチューニングしたとしましょう。さて、何が合いましたか?そして何を合わせましたか?
ご存知の通り、楽器には様々な調があります。また楽器の種類による癖(金管楽器の第5倍音が上ずる・・・など)、楽器そのものに特有の癖(特定の音が高い楽器・・・など)、プレーヤーの癖(演奏上の癖やそもそもの個人の音感的な癖)など、チューニングには克服すべき問題が多すぎます。大体、フルートやオーボエなんて楽器自体の音程は無いぐらいに、アンブッシュアや持ち方・吹き方で音程が変わりますよね。これらをほとんど無視して、皆さんが合わせたのは、無理して作り出したB♭という意味のない音です。
つまり、チューニングはそれぞれの楽器から出た「音」を合わせる作業ではないのです。
それに、仮にB♭の音が完全に合わせられたとしても、それ以外の音は全く合ってはいません。すべての音が完全に正しい音程の管楽器なんて、この世の中には存在しないからです。もしそんな楽器が合ったとしても、和音を吹く時には使えませんよね(和音と倍音・音程については、他のサイトをご覧ください)。
では、一体なにを合わせるのでしょう?
答えは、自分の楽器の調節範囲を合わせます。つまり基準になっている音に対して、自分の楽器はこれぐらいのピッチに調整しておくと、他の音についても調整が楽だ! というような状態にするだけなのです。そのために、自分の楽器の管を抜き差しするなどして、その日のコンディションに応じた調整をしておく準備体操なのです。
もちろん演奏途中に楽器の状態は変化してきますから、曲の中でも必要に応じて調節しますし、特定の調や音だけ抜き差しして調節する場合もあります。
だからチューニングでは音を合わせるのではありません。頭の中や体の状態をチューニングするのです!!
音程の合わないバンドのチューニングや練習風景に必ず見られるのは、1人1人がチューナーを持ち、ベルにマイクを着けて電源をいれ、チューナーを見ながらチューニングする姿です。基準になっている音も全く無視。チューナーだけが頼りで、耳ではなく目で音を合わせている・・・。目で音は聞こえないのにね。
ひどいバンドになると、チューナーの電源を入れたまま、基礎合奏や曲の練習に突入してしまいます。コンクールの本番でもチューナーを使ってるのかな?
チューナーは、「楽器の音をチューニングする」機械です。「何を合わせる?」のところにも書きましたが、管楽器には、その楽器の種類や楽器そのものの特有の癖があります。製造された国、時代、メーカーによってもかなり癖があります。音感の正しい人(よく訓練された人)なら、1回演奏すればそれらの癖はすぐに把握できますが、中高生など楽器経験の浅い人は、なかなかそれを把握しつくすことができません。そこで必要なのが「チューナー」です。自分の楽器のすべての音をチューニングし、楽器と自分の癖を完全に見抜き把握しておくための道具が「チューナー」です。ですからそれができるまでは、毎日面倒がらずにきちんとチューナーとマイクを接続し、癖を見抜き、それを修正しながらロングトーンをする必要があります。
まず先ほども書きましたが、「目でチューニング」しないようにすること。チューナーを見ながら楽器を吹くと、チューナーの値が真ん中に来るように口で調節してしまいます。ですから、チューナーがなくなってしまうと何に合わせたらいいか分からなくなってしまい、結局適当な音程で演奏してしまうことになります。
誰かにチューナーを見てもらって、音に集中するのが1番いいのですが、1人で練習するときにはそれができません。そんな時には、目を閉じて音を出し、その後に目を開いてチューナーを見てください。目を開いたあとにさらに口で調節してはダメですよ。目を閉じて耳と心で頭の中にイメージする音にチューニングし、目を開いた瞬間にそれが正しいかチューナーで確認するのです!
チューナーは、合奏には持ち込み禁止です!
「何を合わせる?」のところにも書きましたが、世の中の音の基準はA(440Hz、ピアノのラの音)にすると、1939年にロンドンで行われた国際会議で決められました。ということは、それまでは特にきちんとした基準はなく、国民性や気分に任せられていたということになります。なぜ440Hzなのかは分かりません。赤ちゃんの鳴き声がちょうどその辺の周波数だからという説もありますが、定かではありません。
さて、「音の3要素」にも書きましたが、440Hzというのは、音=波の周波数(1秒間の波の数)でしたよね。この値が大きくなればなるほど音は高くなり、逆に小さくなれば低い音になります。
ん、待てよ。ということは・・・
まずチューナーやハーモニーディレクターを440Hzに設定するのは、「440HzのAの音を基準にして、1オクターブを12等分して得られる半音階(つまり平均律)に、各鍵盤の音を合わせる」という作業です。
、
(n=1、2、3・・・半音の音))
という計算で、各音の周波数が計算されます。難しいから、あまり考えないようにしましょう(笑)。
でもとりあえずチューニングするB♭の音は、Aから数えると1つ上の半音ですから、n=1を代入すると、
約466Hzということになります。
①
Aが440Hzの時には、Bの周波数は約466Hzである。
②
基準とするAの周波数が変化すると、各音の周波数も当然に違ってくる。
ということです。
最後に、今まであえて避けてきましたが、音程はセント(cent)という単位を用いても表されます。チューナーに表示されるのはこの「セント」なので、むしろなじみやすい数字かもしれません。このセントですが、1オクターブを均等に12分割し(平均律)、その半音に当たる音程の差を100セント(cent)としたものです。つまり音が1オクターブ違うとすると、100セント×12半音=1200セント違うということになります。
でも基準にするAの周波数次第で、半音あたりの周波数も違ってくるのでしたよね。ですから、「1Hzって何セント?」と言われても、その日の基準ピッチによって異なってしまうため、答えることができません。」
「音=波」であることや、音程が合わないと「うなり」が聞こえる理由が分かってきたと思います。ここでは、「音程のずれととうなり」の関係を見ていきましょう。
今、2人が440Hzと442Hzの音程でAの音を出したとします。これまでのように2人の音(合成波)を赤で表すと、グラフは次のようになります(波が細かいので、ベタ塗り状態に見えます)。
1秒間(グラフの端から端まで)で、2人の音である合成波が大きく2回うねっていることが分かります。つまりこの場合2人の音を聞くと、「うぉん、うぉん」と1秒間にきっちり2回、うなって聞こえます。つまり、2人の音程が1Hzずれていると、1秒間に1回のうなりが聞こえるのです。
ちなみに440Hzと444Hzの2人の音では、
というように、当然4回のうねりが見られ、じっさいに4回のうなりが聞こえます。
つまり、「音を合わせる」ということは、ただ漠然と自分の音を誰かの音に近づけるのではなく、この「うなりを無くする=波を合わせる」という作業なのです。これを理解しただけで、どんな音痴の人でも、必ず音程を合わせることができるようになります。また、しっかり訓練すれば、音程がずれたままでは演奏することができないほど、音程に正確な人間になれます!!本当です!
詳しくは、次の「波を合わせる練習法」を見てくださいね。
皆さんはまっすぐな線を引くときに、どうしますか?きっと線よりまっすぐな定規を使うと思います。
「音を合わせる=波を合わせる」でしたよね。波をあわせるためにも、やはりまっすぐな何かが必要です。それはなんでしょう?
多くの人は「チューナー」を思い浮かべると思います。確かにチューナーを見ながらロングトーンをすれば、その時だけはまっすぐ正しい音程で演奏することができます。ですが、チューナーは「目で音を見る」ための機械でしたよね。ですから、マイナスではありませんが、あまりいい練習にはなりません。
次に思い浮かべるのは「ハーモニーディレクター」など。これで何らかの音を出して、自分もその音を演奏すれば、あとは「うなり」が出ないようにすればいいのでしょうが、全員分のハーモニーディレクターは、皆さんの学校には存在しないですよね。
では、どうするか?
実は皆さんの周りには最高の定規が存在します。それは、あなたとあなた以外の誰かです!!
合奏は通常、多くの奏者が集まって行われますが、全員の音が合うためには、まずその最小単位である2人の音程が完璧に合わなければなりません。これは当然のことなのですが、日ごろからコンクールや演奏会のために曲の練習ばかりに追われるバンドの多くが見失っていることです。
もちろん、効果的な2人組の練習をすればですけど・・・。
さらに、1人ではサボりがちな練習でも、必ず2人で毎日やると決めておけば、練習も楽しくサボらずにできるようになるし、なにより様々な部員どうしでペアをつくって練習することにより、お互いの「信頼」が生まれます!!よいサウンドづくりには、心の調和がなにより大切ですからね!
「2人組」の方法は多様であり、ここですべてを書くにはあまりにも無理があります。
もし興味がある方(生徒さんでも先生、その他の指導者の方でも誰でもかまいません)がいらっしゃれば、直接ご連絡ください。
資料をお送りすることもできるし、直接指導にうかがうこともできます。
スケールなんて、ただのドレミファソラシド・・・。私が子供のころは、なんで大事なんだろうと思っていました。しかし、スケールはすべての練習の基礎となり、とても大事です。
まずスケールの重要性は、「頭の中の階段の高さを一定にする!」ということです。ドとレの間には半音が2段、ミとファの間には階段が1段(あとは面倒だから省略します)。この段差を、どんな調においても常に正確に保つのが、スケールの意義です。
しかし人間は、まあまあ優れた動物なので、どこかの調についてこの段差が正しく身につくと、他の調でもその階段を正しく使えてしまいます。だから、この「段差を正しく身につける。」という作業に関しては、何も全部の調で行う必要はありません。まあ多くのの調でやるに越したことはありませんが・・・。
沢山の調でスケールの練習をするのは、「チューニングって何を合わせる?」で書いたような、楽器そのものやプレーヤー自身の癖を矯正することと、指を覚えることが目的です。これら(階段と癖と指)を一度にやろうとしても、どうせ上手くはいきません。ですから、まずは簡単な調(指使いが)でしっかりとした階段を身につけ、それとは別に指使いのための練習をすることが大切です。
「波を合わせる練習方法」で書いた、「2人組の練習」をスケールに応用させると、少なくても階段の段差と指に関しては、自然に克服することができます。またそれを毎日いろんな楽器とやることで、調の違いも克服できます。
チューニングする際、普通は最初に基準になる音を出します。ハーモニーディレクターの音だったり、オーボエだったりクラだった、バンドによって様々です。どの楽器を基準にするかでいろいろこだわる指導者の方もいらっしゃいますが、正直、何の楽器でもかまいません。大事なのは、聞こえた音に対して、各プレーヤーがどういう準備をするか?ということです。これまで書いてきたように、少なくてもその「聞こえた音」に対して、自分の楽器をチューニングするのではありません!
チューニングが苦手でなかなか音が合わせられない人は、だいたいこの作業を怠っています。バンド全体にも同じことが言えます、音程の悪いバンドほど、チューナーとハーモニーディレクターにしがみつきます。
楽器に息を入れて音が出る!普通は口やリードがもっとも振動しやすいときに音が出るはず。その瞬間の音程を、頭の中にある音に合わせることが「チューニング」です。音を長く伸ばしながら、少しずつハーモニーディレクターなどの基準の音に近づけて行ったりするのは、「基準の音に自分が慣れていく」作業であり、管の長さを変えて、自分の楽器が一番コントロールしやすい状態(頭の中にある音に近い状態)にするという、本来の「チューニング」ではありません。
大体、下手なバンドほど、ハーモニーディレクターの音を鳴らしっ放しにして、1人ずつ音を長く伸ばしてその音に合わせていったりするものです。皆さんのチューニングも、そうなってはいませんか?
そうやって合わせた音は、合っているのはその時だけで、いざみんなで音を出したりすると、当然のようにぐちゃぐちゃになります。「管の長さ」を調整したのではなく、口や吹き方を変えて、出ている音に無理して合わせたのですから、当然の結果です!
「あ」と言いたいのに、楽器からは「い」に近い音がするようであれば・・・そのときにはしょうがないから管を抜き差しします。チューニングはこれで終わりです。もしどうしても不安なら、それを2回ぐらい繰り返してもいいですけどね。でも、1回目で合わない人は、大体10回目でも合わないものですよ!ほんとに(笑)
ハーモニーディレクターはすばらしい機械です。高校のとき、指導に来てくださった淀彰先生が、発売間もなかったYAMAHAのハーモニーディレクターを持参され、純正調と平均律の和音を説明してくださったときに、目から鱗ではなく、耳から脳みそがこぼれ落ちるほど感心しました。現在発売されているハーモニーディレクターも、機能が充実し、バンド指導には欠かせませんよね!!私はここまで、音を出す1つの機械としてハーモニーディレクターという名前を出してきましたが、私はその有用性や必要性を否定しているのではないことをご理解くださいね。この通称「ハモデ(レ)」は、できれば全員が所持するべきものだとさえ思います!!!
さて余談はさておき、基準音を出すはずのハーモニーディレクターよりも合うとはどういうことでしょう?
ハーモニーディレクターには様々な音色が準備されていますが、いずれも機械で作成された波が音となってスピーカーから出てきます。例えば1オクターブの2つの音を出したとして、その2音は完全に同じ波形(つまり音色)で、片方の音の周波数だけが倍(440Hzと880Hzなど)になっているわけです。もちろんそれらは完全にお互いの波を強めあうので、合成音はよく響きます。
しかし何かの音を演奏するときに、その周波数の音だけが楽器から出るわけではありません。その音の周波数の整数倍である音、つまり倍音が沢山でます(あまりいい表現ではありませんが・・・)。これらがもともとの楽器から出た音や、お互いの倍音どうしで波を強め合って(共鳴しあって=すべて基準音の整数倍ですから、とてもよく響きあいます)、倍音の少ない電子音であるハーモニーディレクターの音よりもきれいに響いてしまうのです。
倍音は、音の神様が使わした「天使」です。きちんとしたチューニングができるバンドにだけ現れ、その音をさらに輝かせてくれます(^^)
また、倍音は限りなく上に広がっていきます。それは周波数に上限がない(耳に聞こえるのはせいぜい20000Hz弱までですが)ために非常に高い音まで共鳴し合うことと、高周波数の波の方が透過性が高い(遠くまで響く)こと、そしてプレーヤーの音は床より下には響かない(当然か・・・)ということのためです。
よい響きは、限りない上空にあります!!
そして最後に一言、「聴いたか?今の音。ハーモニーディレクターよりも合ってるし、世界一響くホールで演奏してるみたいだよ!」なんて、気の利いたことを言うんです。これも結構大事ですよね!!
あまり上手ではない、あるいは音が汚いバンドの練習に共通している点が、「チューニング時間がやたら長い!」ということです。それは顧問の先生が、チューニングというものの意義や方法を根本的に理解していないためであると思います。「チューニングって何を合わせる?」「音ではなく「波」を合わせる」「まずは頭の中をチューニング」などでも書きましたが、基準になる音を大音量で出し続け、さらにチューナーまで使って1人ずつ音を合わせるのは、全く意味がありませんし、無駄です。
あなたのバンド、チューニングだけで10分も20分もかかっていませんか(笑)?
次のような方法はいかがでしょうか?実際に私が行う方法です。
① まず基準になる音を出します。ハーモニーディレクターでも何かの楽器でもかまいません。
② 各プレーヤーが頭の中でその音を鳴らす。
③ 音を止める。
④ メトロノームを60にして、1人1拍ずつ音を出していく。自分の前に出した人の音が基準音になる。
⑤ 合わないときだけ、「合わない」と言ってあげる。言われた者や自分で気づいた者は自主的に立つ。
⑥ 一通り終わったら、合わなかった人だけ(立っている人)もう一度同じことをやる。
⑦
全員座ったら終わり!
最初はなかなか難しいですが、きちんとした訓練をつめば、1回目に音が合わずに立つ生徒はほんの数名になります。だから、55名のバンド(打楽器を除けば50名以下ですよね)でも、だいたい2分あれば完璧にチューニングできます。
様々な教則本やバンド教本に、基本的な音形について書いてありますので、ここではその確認と補足です。
まず次の図を見てください。
長い音、短い音、アクセント、テヌートなど音形にもいろいろありますが、今は何の指示もない、四分音符を演奏すると思ってください。ご覧のように、音の基本形は図の通りです。
音の出だし=アタック 音の中ごろ=コア 音の終わり=リリース
これが基本なのですが、実際にこの言葉を使って音形のことを説明しても、いまいちピンと来ないものです。そこで図にあるように、それぞれの部分に「た」「あ」「ん」と言葉をつけてみましょう。
四分音符の音は、基本的に「たあん」です。スタッカートは「たん」、テヌートは「たあー」、長い音は「たああああん」かな。
「アタックがきつい」とか「リリースが下手」なんて生徒に大声で叫んでも、よく伝わらないどころか、間違ったニュアンスで伝わってしまうことが多いと思います。その代わりに、「“た”しか聞こえない!」「“ん”がないから、音が響かない」とか言ってあげると、圧倒的に分かりやすいのです。音が短い時には、「“あ”の数をあと3つ増やして!」なんて感じです。
この先も、4分音符が1mだと仮定して話を進めますね!
人は視覚に最も大きな影響を受けます。つまり見た目に弱いということ。音の見た目は出だし(アタック)です。「音形の重要性」に書きましたが、正しい「た」を発音することですね!下手な人は、まずこの見た目がダメです・・・
でもそれは当然のこと。安心してください。ここではなぜ見た目がよくないのか、理解してみましょう!
簡単に言うと、「止まっている物体はすぐには動けないし、動いている物体は急には止まれない」というものです。この「止まっている物体はすぐには動けない!!」ということを、音に当てはめてみましょう。
なにか音を出そうとします。曲の最初かもしれないし、休符のあとかもしれません。その時、音楽は流れているのに皆さんは音を出していない、つまり止まっているのです。この「止まっている」状態から、正しい音形で音を出そうとすると、アタックの部分によほどしっかりした息を入れ、なおかつそれを持続させないと、正しい音形にはなりません。
止まっている人に、いきなり「合図した瞬間から時速40kmで走れ!!」と言っても、慣性の法則が働くから無理でしょう!
でも音楽ではこれが可能です。しっかり理解し、準備すればですが。どうするのかというと・・・
まず、頭の中に四角いものを思い浮かべてください。私はいつも豆腐を思い浮かべます。そして・・・
要するにアタックの形をしっかり四角い形にすればいいのですから、まずは舌を離した瞬間(タンギング)からしっかりとした息が楽器に入るよう、口の中の舌より内側の空気の圧力を、すこし高めに保っておいてください。これがしっかりした準備です。簡単でしょう!
しっかり息を入れるということと、強く舌をつくするということを間違わないでください。タンギングはどんなにきつい音でも、常に「舌を離すだけ」です。あとは息のスピードと量の問題です。下手な人にもっと出だしをしっかり!というと、だいたい舌を離した瞬間だけがんばります。その結果、頭だけ鋭角の「三角形」の音形になり、そのあとの息も充実しないので、結果的に耳に刺さる響かない短い音になってしまいます。
人は、音符を見ると、当然にその音を「確実に出そう」として、アタックつまり「た」を意識します。これはとても重要かつ上手に発音するのはとても難しい(慣性の法則があるから=「出だし(アタック)の難しさ」を参照)ものです。
そのため、音を出す際に、人はどうしても音の出だし、つまりアタックだけに集中してしまうのです。
しかし音の命はその中身である「コア」にあります。
私たちは音を「産み出す」ことだけに気をとられてしまうのです。でもそれでは生みっぱなしの子供と同じ。親になり子供が欲しいという場合、「子供を産むだけ」もしくは「子供をつくる行為だけ」に興味があるわけではないでしょう??まずは子供を産み、その子供にどのように関わっていくかでその子の将来が決まるのです。音もこれと同じです!!
では実際に何を気をつければいいのでしょう?
「音の中身(コア)の充実」で書いた、「音を育てる!」については納得していただけましたか?次は音の最後の部分の形、つまり「リリース」です。「たあん」という基本的な音形の「ん」の部分です。音楽の表現力やセンスを決める、もっとも大切な要素ではないかと思います。
「出だし(アタック)の難しさ」で書いたように、人はどうしても音を産み出すこと、つまりアタックにばかり気をとられてしまいます。だから音がどうしても鋭くて短くなってしまうんでしたよね。それで、それに気づいた顧問の先生が次にやることは、「音の長さを充分に保って!!」と言って、とにかくすべての音をテヌートで長く吹かせるということです。「ベタ吹き」と言いますが、これは通称(私の中では)「バカ吹き」と言います(笑)。
よく、それぞれの音の音形を音符の上に記入させる方がいらっしゃいますが、これだと見た目で分かっても、音を目でとらえてしまうため、その通りに表現できない場合が多いと思います。生徒に考えさせたものをチェックするのも大変ですしね。その点、楽譜に仮名を振れば、確認の時には、「仮名の通りに歌ってみろ!」と言えば、ある程度の人数でも一発で間違いを指摘できますよね。
② 最後の音の次の音や休符に注目させる!
そこで・・・
その音自体のリリースの形ではなく、その次の音や休符に注目させましょう。例えば4拍目の音のリリースを考えるなら、次の5拍目を意識させるのです。休符であれば、「それは休符ではなく、5拍目を担当する音のない音だから、そこまでしっかり演奏しよう!」とか、フレーズの最後の音ならば、「その音のリリースが、次のフレーズのどの音につながっているのか。」というように、働きかけるのです。次へのつながりを感じることで、リリースの形や処理は自然に出来上がっていきます。
コンクールの結果も音の形も、後ろから見直してみましょう!
演奏において最も大切であり、みなに意識されるのは「出だし(アタック)」ですが、それと同じくらい大切で、アタックの良し悪しをも左右するのが「後姿(リリース)」です。私は音形の説明をするとき、最も基本的な音形は「たあん」(「た」=アタック、「あ」=コア、「ん」=リリース)であると表現しますが、今回は音の後姿(「ん」=リリース)について、再確認してみましょう!...
コンクールの曲がなかなか上手く演奏できないとき、指揮者からの指示やパートリーダーからの指摘は、どうしても音の出だしに関するものが多くなりがち。でも実は音のリリースに原因があることが多いんですよ!
(1)音の長さは十分に保たれていますか?
例えば四分音符が2つ連続しているとします。この状態を言葉で表すと「たあんたあん」になるわけですが、それではわかりにくいので、「たあんたあん」を図にしてみると、①のようになります。 「ん=リリース」とは1つ1つの音の余韻でもあり、その余韻が終わった瞬間が次の音の「た=アタック」なのですから、図でみるように、音は1つずつ区切れているようで、実は絶妙にくっついているはずです。ところが多くのバンドでは、「た=アタック」ばかりを意識するものですから、②のように演奏しがちです。
つまり、きちんとした「ん=リリース」を意識することは、次の音の「た=アタック」を正しいタイミングや形で演奏することにもつながるのです!
あなたのバンドの演奏、今、②のようになってはいませんか?
(2)音の形を正しく演奏できていますか?
音の長さが正しく演奏できているとしても、音の形が違っていたら、「ん=リリース」の形や大きさはことなるはず。③で、基本的な音の形が黄色なのにピンクの形で演奏する人がいたら、どうなるでしょう?1つの音の中でバランスが変化するので豊かな響きを得ることができません。それが連続したら、曲全体が貧相な響きになってしまいます。どんなに音程が合っていたとしても・・・。
だから、「ん=リリース」を合わせることは、曲全体の響きを決めることにもなるのです!!
大好きな人にプレゼントを渡すとき、「ほれっ!」と言って投げ渡したりはしないでしょ?相手を見つめ、心をこめて丁寧に手渡しするはずです。音も同じです。そんな素敵な演奏をしてくれた団体さんの後姿に、審査員はきっといい点数をつけてくれますよ・・・
どんなに音程が合っていても、音形が合わなければ音は響きません。
次の図を見てください。
2人が全く違う音形で吹いた場合を図にして見ましたが、たった1音の中でもこのような違いがあると、全体としての響きは2人の音の重なりの部分しか保障されません。これが数十人の合奏になったらどうでしょう?仮にピッチが完全にあっていたとしても、全体の響きはかなり貧弱で不安定なものになってしまいますよね!1つの音の中で、和音のバランスも楽器のバランスもめちゃくちゃになってしまうのです。
もう分かってもらえましたよね。
全体としてよく響く演奏をするためには、曲をつくっている音符すべてについて、音形の統一をしておく必要があるのです。当たり前のことですが、皆さんのバンドはそこまで注意できていますか?
音符は世界共通の記号であり、基本的なことさえ理解すれば、言葉の壁を越えて音を奏であうことができる素晴らしい人類の遺産です。ですが、音符の形がオタマジャクシなせいで、多くの人が勘違いをし、演奏が下手になっている・・・そんな気がするのです。
音符って、丸いでしょ!黒玉か白玉か、しっぽがあるかないかは別として、基本的に丸・・・というより楕円。でも演奏上の音の形(音形)って、そうじゃないですよね。
音楽にもさまざまな種類があり、それによって音形も変わってきますが、基本は図の上段のような形なはず。いろんな教則本にもこんな形が書いてあるのではないでしょうか?
けど・・・
特に障害を持っていない人間は、感覚の83%を視覚に頼っていると言われています。そのためなのかどうかは分かりませんが、とてもとても多くの人が、図の下段のような音形で演奏するのです。スラーやテヌートがついていればまだマシですが、何も指示がない音符ではとかく下段のような音形になり、その結果、「音が短く」なってしまっています。
あなたは大丈夫ですか???
音が短ければ、ボツ切れになって聴こえるばかりか、仮に音程が合っていても響きの時間が短くなってしまうため、音量も響きも小さくなってしまいます。また上段と下段の音形が混在するようなバンドでは、音形の違いから1つ1つの音の響き方が変わり、音のバランスまで悪くなってしまいます。
だったら演奏上の音形や音の長さを音符の形として表現しながら楽譜を作ってみればいいのでは・・・?なんてことを真剣に考えて、ちょっとだけチャレンジしてみたのですが、全然使い物にならないものができてしまいました。オタマジャクシはオタマジャクシのままがいいみたいです。
でも音形をきちんと意識し統一するために、慣れるまで全部の音の上に正しい音の形を書いてみるのもいいのではないでしょうか?そんなことをされている指導者の方もいらっしゃいますよ。音符に付け足す臨時記号の多くは「音形」をベースに考えられたのではないかと思うのですが(テヌート・アクセント・スタッカート・クレッシェンド・デクレッシェンドなどなど)、そんな記号がついていないすべての音の音形を考えてみるのも、大事なことだと思いますよ!!
もう1度だけ言います。ほとんどのバンドでは、音が「短い!」です。
「倍音が多い音ってどんな音?」って聞かれたら、なんて答えます?「よく響く音」とか「きれいな音」とか・・・あまりにも曖昧。
はっきり言って、楽器関係者が「倍音が多い音」という時、その意味を正しく理解していないか、勘違いしている場合が多い気がします。皆さん自身だって、「倍音」という言葉を使う時の皆さんの認識って、せいぜいそんなもんでしょ?(違っていたらごめんなさい)
「倍音」についての説明は世の中にあまりにも沢山あるので、ここではあえて避けます。まあ、何か楽器で音を出すと、その音(波)の周波数の整数倍の周波数の音が出て、その量が多いほど「よく響く」ということぐらいは理解しておいてください。
例えば、チューニングB♭の音を出したとすると、その2倍の周波数の音(1オクターブ上のB♭)、3倍の周波数の音(1オクターブと5度上のFの音)、4倍の周波数の音(2オクターブ上のB♭)、5倍の周波数の音(2オクターブと3度上のDの音)・・・あとは自分で調べてください。こういうのを「整数次倍音」と言います。金管楽器の人なら、ペダルトーンから、ピストンやロータリーを押さずに出る音を下から順に言っていけば、それがペダルトーンの周波数に対する整数倍の音ということになります(あ~簡単!)。
さてそれらが沢山出たとしたら、実際の音としてはどうなるのでしょう?
このことについては、「声楽」の分野の方のほうがよく理解されているようです。ためしに調べてみてください。とても分かりやすく解説してくださっているサイトが沢山あります。まあ分かりやすく言うと、声楽家の方とか、黒柳徹子さん、浜崎あゆみさん、郷ひろみさん・・・など、声質がはっきりしてよく通る感じ。実際に出している声の周波数に対し、沢山発生した倍音が重なり合ってお互いの波を高めあうからこのような声になります。
これは楽器でも同じこと。楽器が上手いと言われる人は、それほど息を沢山使わなくてもよく響く音を出しますよね。これは自分で出した音に対して、同時に発生する倍音が実際の音を更に高める(波の合成)からです。この現象は、音程が非常に良いバンドの音と同じです。音程が合うことで、それぞれの音の波がお互いに高めあうので、非常に大きく響いたり、小さな音でもよく聞こえたりするのです。
でも、ちょっと問題が・・・。整数倍の倍音が多く発生する声には、「よく響く」「カリスマ性がある」などの評価がある反面、「きつい音」「ギラギラしてる」「キンキンする」・・・などの評価も同時に存在します。楽器だって同じこと。「よく響く」音は、同時に「きつくて細い音」だったり「ギラギラキンキンして不快な音」だったりもするのです。
さて、どうしましょ?
次以降をお読みください。
私たちが「倍音」と言っているときには、その内容は99%ぐらい「整数次倍音」のことを指しています。整数次倍音とは、実際に出した音の周波数の整数倍の周波数を持つ音が勝手に出てくるというもの。この勝手な音が沢山出た方が「よく響く」のですが、反面、「音がきつくて硬い」「ギラギラしすぎて耳障り」と言われてしまうこともあるのでしたよね。
ちょっと話は本題から外れますが、倍音を全くない音のことを「純音」と言います。完全な純音は理論上の話ですが、極めて近い音なら機械で作れます。音叉とか時報の音などがそれ。チューナーで基準音出した時の音も。「ポー」って感じの音ですかね。音量を大きくすれば波の振幅は大きくなりますが、倍音がないため、うるさいだけで遠鳴りしません。
さて本題。音色の違いは音の波の「形」の違いなのですが、この形の違いは「整数次倍音」と「非整数次倍音」の入り方によって生み出されるのです。これが楽器によって、プレーヤーによって、マウスピースによって、楽器の素材やメッキによって・・・様々な要素によって異なるため、「音色」は多様になります。しかもそこに「個人の好み」が加わるものだから、音色の話は難しいのです。
「整数次倍音」についてはなんとなく分かってもらえたと思いますので、次は「非整数次倍音」について説明します。非整数次倍音とは、整数次倍音ではない倍音です(わー簡単!)。つまり、実際に音を出した時に生じる、その音の周波数の整数倍ではない周波数を持つ勝手に出てくる音です。具体的には・・・これも「声楽」の説明が分かりやすいのですが、ハスキーな声や優しくて親しみが持てる声とのこと。森進一さん、桑田佳祐さん、宇多田ヒカルさん、北野たけしさん・・・、まあなんとなく分かりますよね。 楽器で言えば、「柔らかい音」「渋い音」「ダークな音」という感じでしょうか?これはこれでファンが多いのではないでしょうか?私もこの非整数次倍音が多く含まれている「Euphonium」の音を理想としています。
ところが、「非整数次倍音」が多すぎるとどうなるのでしょう?
自然界で発生する多くの音がこの「非整数次倍音」を多く含んでいると言われています。基準音を高めず、逆に基準音を打ち消すような波の音も同時に発生するため、「音程」が感じされなくなり安定しません。最も分かりやすいのが「シンバル」の音なのだそうです。シンバルの音には非常に多くの非整数次倍音が含まれるため、音程がなく「シャーン」という究極のハスキーボイスが聞こえます。そこまでではないにせよ、一般的には「非整数次倍音」が多いと音が「かすれ」たり「しゅーしゅー」と空気が漏れるような音に近くなっていきます。
結局のところ、この2つの倍音の係わり合いが「音色」であり、全てのプレーヤーを悩ませる原因でもあるのです。
ちなみに…
私の楽器(ヒルスブルナーのユーフォ二アム)から出たチューニングBとその上のFの倍音具合を載せてみました。1枚目がチューニングBです。下に鍵盤の絵があるので、どんな倍音が出ているか分かると思います。飛び抜けて高いのが整数次倍音で、下にある青や青緑の部分が非整数次倍音の波です。2枚目はFを鳴らした時のものですが、整数次倍音の山が5度上にズレているのが分かると思います。
「整数次倍音」が多いと、輝きがあるよく響く澄んだ音になるが、その反面で音がきつく聴こえます。逆に「非整数次倍音」が多いと、優しく柔らかい音になるが、多すぎると音がガサガサしてきて響かなくなります。そのため、「よい音」あるいは「自分がよいと思う音」とは、両倍音のバランス次第ということになります。
...
最も理想的なのは、曲想や自分の感情によってそれらを自在にコントロールできること。「そんなこと、可能なの?」と思われる方もいるかと思いますが、声楽や私達の日常会話で考えてみましょう。
倍音を自在にコントロールする歌手として、ネット上で最も多く紹介されているのは「美空ひばり」さんです。例えば「川の流れのように」を思い浮かべてみてください。前半の部分は声のトーンを押さえ、非整数次倍音を前面に出して、柔らかく歌われています。でも「ああ~、かわのながれのように~」というサビの部分になると、声を一気に芯のあるものにし、遠くまで響き渡るように歌われますよね。整数次倍音が一気に増えるという感じです。
歌じゃなくても、私たちだって日常会話の中で、色々な声を使い分けていますよね。大好きな人と話す時には非整数次倍音を多く含む優しい声で、子供を叱ったり仕事で重要なことを伝える時には遠くまでよく響くはっきりした声で話します。露店での呼び込みとか、ショップ店員が「いらっしゃいマへぇ~ぃ↑」と言うあの違和感しかない変な絞った声などは、まさに整数次倍音を意識的に使っている結果です。
結局、楽器でもそんな自在なコントロールが出来ればいいわけですが、倍音とは「出す音」ではなく「出てしまう音」でもあるため、その方法は単純ではありません。というより、方法があまりにも沢山ありすぎて、何をどう説明してよいのか・・・という感じです。
「よい音の出し方 ≒ 整数次倍音と非整数次倍音の出し方」なのですが、次回はその辺のことについて書いてみたいと思います。
整数次倍音と非整数次倍音を出し分けるのは簡単です!
音がツボにはまり楽器の音が雑音なく綺麗に響いている時に整数次倍音が多く発生し(特定の周波数の高い山が高音域まで数多く確認できる)、ツボからちょっとずらすと、非整数次倍音により不特定の周波数に発生する低い山の高さが高くなります(つまり非整数次倍音が多く発生する)。「よい音」が単純に「整数次倍音と非整数次倍音のバランス」であるならば、私が利用しているようなアプリでも使って、眼で見ながら音を確認し、それを身につければいいということになりますが、実際に理想とする音色を出すのは、そんな単純ではないことは、皆さんよくお分かりだと思います。
たとえば、非整数次倍音が増えるように「音のツボをわざと外して」音を出すと、肝心の基準音や整数次倍音の波の山が低くなってしまいます。これでは本末転倒です。
豊かに響く音を目指すなら、整数次倍音が保たれた状態で非整数次倍音もある程度聞こえる!という状態を目指さなければなりません!
そこで、音色に関する倍音の変化について、いくつかの視点で考えてみたいと思います。ちょっと金管よりの話になりますが、この話はEuphonium担当である私自身の考えをまとめるために書いているので、その辺はお許しください。長くなるので、今回は{開管と閉管の振動}{円筒管と円錐管の違い}だけ。次回は、{マウスピースの大きさや深さの問題}{楽器の材質やメッキの問題}{有効(?)の小物について(リーフレック・バルブキャップ・ボトムキャップ・リガチャーなど}について書いてみたいと思います。
{開管と閉管の振動}
フルートは音を出す時にもマウスピースの部分と末端の部分に穴が開いています。これを開管といいます。開管の振動で音を出している楽器は、フルートとその仲間だけです。フルート以外の管楽器では、マウスピース側が何らかの形で閉じられています。これを閉管といいます。フルートの仲間以外の楽器はすべて閉管楽器ということになります。
開管では全て(基音の奇数倍と偶数倍の周波数の音)の整数次倍音が出ます。それに対し閉管では、原則的に基音の奇数倍の倍音しか出ません。ところがクラリネット以外の楽器では、楽器内側が、途中から円錐形になるため、原則に反して偶数次倍音が出ます。サックスなどでオクターブキーを押すと基音の2倍の振動数である1オクターブ上の音が出るのに対し、クラリネットではレジスターキーを押すと基音の3倍の振動数である1オクターブと5度上の音が出ることからも、この事実が理解できます。
それと音色がどう関係するのかというと何とも言えないのですが、音色の話をする上で、楽器の構造を知ることはとても重要なのです。詳しく知りたい方は、ネット上で検索してみてください。音楽系のサイトよりも、「高校物理」の方が分かりやすいかもしれません。
{円筒管と円錐管の違い}
マウスピースやリードの部分で作られた音の波は、管内で重なり合い強めあった結果、管内に留まりきれないようになり、ベルやキーの部分から漏れ出します。これが楽器特有の「音」になります。管内の構造が完全な円筒形か、ある程度のところまで円筒形である場合には、音の波は理論的に減衰することなく管内で反射され、それが重なり合うことで波を強めあいます。効率的に音を増幅させるのは円筒管です。しかし音の出口であるベルの部分に広がり(テーパー)を持たせないと、せっかく出た音が広がらないため、結果的に響かない音になってしまいます。
逆に円錐管では、管の内径が広がるほど波が管内の壁にぶつかって反射するための距離が増していくため、そのままでは音の波が減衰してしまうことになります。それを補うために(より大きな振幅の波を作り出すために)、より多くの息が必要となりますが、管内の多くの空気が振動する分だけ、音が深く豊かなものになります。また、結果的に非整数次倍音も多く発生し、芯はあるが深くて豊かな音が生み出されることになります。
つまり、管内の広がり(テーパー)をどこからどの程度つけるか?ということが、音の広がりや音色にはかなり重要な要素になるのです。
このあたりのことについては、YAMAHAさんのサイトて実験を紹介しています。実際に音を聴き比べられるので、とても参考になりますよ!
https://www.yamaha.com/…/saxoph…/mechanism/mechanism005.html
{マウスピースの大きさや深さの問題}
私がごちゃごちゃ言わなくても、このことについては、皆さんよく分かっていると思います。きちんとした振動さえ作れればマウスピースの大きさはどうでもよく、理論的にはトランペットのマウスピースでチューバのペダルトーンを出すことも、チューバのマウスピースでトランペットのトリプルハイB♭を出すことも可能です。でも前者では音が細くなり、後者では音がぼやける(?)ことが容易に想像できます。
それはなぜ??
小さいマウスピースでは、振動する部分が小さくなるので、出している音とは異なる余計な振動を起こす部分が少なくなります(非整数次倍音が少なくなる)。もちろん唇の振れ幅(振幅)自体も小さくなりますから、音としては細く小さくなります。大きいマウスピースではこの逆です。
木管についてはマウスピースの大きさがほぼ一定であるため、このような違いは生じにくいのでしょうが、リードの削り具合や当たり外れなどに関しては、同じような状況が生じるのではないでしょうか。
ちなみに、私が持っている大小2種類のマウスピースで倍音具合を調べた結果は写真のとおりです(1枚目:大、2枚目:小)。大きいマウスピースの方が、整数次倍音(高い波)以外の低い波が多いことが一目で分かります。当たり前のことですが、大きいマウスピースの方が音が大きくて深いですが、それをキープずるための息の量と体力を必要とします。
今回、{楽器の材質やメッキ・小物の影響}についても掲載する予定でしたが、なかなか置くが深い内容になりそうだったので、また次をご覧ください。
{楽器の材質やメッキ・小物の影響}
楽器の音色は、楽器内の空気の振動によって決まりますが、空気だけではなく、楽器自体の振動も音色に大きな影響を与えています。材質が硬ければ、管内の音波の反射はよく鳴りますが楽器の振動は抑えられ、柔らかければその逆の現象が起こります。この兼ね合いを考え、長年の試行錯誤やプレーヤーからの要求により、現在のような様々な材質・メッキ等が存在するのです。
例えば金管の材質は真鍮(亜鉛と銅の合金)ですが、銅の割合によって、少ない方からイエローブラス、ゴールドブラス、レッドブラスなどがあり、それぞれ硬さと音色が異なります。一般的に亜鉛の割合が多くなるにつれて色が薄くなり硬度が増します。逆に銅の割合が多くなるにつれて赤みを帯び、硬度は低下します。一般的にはイエローブラスの方が、レッドブラスよりも音が明るく硬いといわれますから、楽器の硬度と音の明るさ・硬さには相関性がありそうです。この傾向は木管楽器についても同じです。
ここで、「よく響く」ということについて考えてみましょう。この表現はとても曖昧ですが、素人的には「楽器は少しでもよく響いた方が・・・」と思いがちです。ちなみによく響くための材料としては、一般的に材料のE(縦弾性係数:ヤング率とも言う)/ρ(材料の密度)の値が高いものが良いと言われています。簡単に言うと、曲がりにくく密度が小さい(=軽い)材料が適しているということになります。
また、「よく響く」ためには、音の振動を楽器の内部で効率よく反射させる(=吸収しにくい)方が良いと言われています。これを「内部減衰率」ち言います。つまり「よく響く」楽器の材料としては、E/ρの値が高く内部減衰率が小さいものがいいということになります(理屈では)。
このことについては、佐田岳夫(Takeo Sata)氏が、「楽器と金属 Metallic Materials for Musical Instrument」(https://www.jstage.jst.go.jp/…/…/64/4/64_4_269/_pdf/-char/ja)という論文(1993.10)で詳しく述べられています。図は、佐田氏がこの論文中に使用されていたものです。
佐田氏も述べられていますが、このグラフを見ると、楽器の材料としては、ただ単に「よく響く」ことだけを考えているのではないということが分かります。材料の固さや密度、内部減衰率をある程度犠牲にしても、「好まれ求められる音色」に対応するために、試行錯誤が繰り返されてきたと言えます。
また材料やメッキ以外に、世の中には音色に変化を持たせるための様々な小物も存在します。リーフレック・バルブキャップ・ボトムキャップ・リガチャーなど・・・。リガチャーは必要不可欠な小物でしょうが、それにしては様々な形や材質・メッキのものがありますよね。こういったものは、上の話で言えば、楽器そのものの振動を変化させる(抑える)ことで、擬似的に内部減衰率を変化させるものと判断されます。楽器そのものを何本も買ったり、色んなメッキをかけてみたりすることが、普通の人にとっては経済的に難しいため、安価に音色を変化させるものとしては、充分に可能性がありそうです。
ただ1つ言えることは、音色に「変化」は生じても、それがよい「変化」になるとは限らないということ。取り外し可能で元の状態に戻せるものなら気軽に試せますが、メッキまで変化させてしまうと、その先の保障はない・・・と言わざるをえません。まあ、庶民の好奇心と探究心を埋めるものとしては充分かもしれませんね!!
数回に渡って書いてきた「音色」の話は、今回で終わりになります。「音色」についてはあまりにも要素が多いことと、「個人の好み」にも大きく左右されるので、結論はもちろんありません。理想の音を追い求めて一生試行錯誤することが、音楽の喜びなのでしょうね・・・。皆さんの追い求める理想に、ほんの少しでも役に立てたでしょうかねぇ・・・???
{楽器の材質やメッキ・小物の影響}
...
楽器の音色は、楽器内の空気の振動によって決まりますが、空気だけではなく、楽器自体の振動も音色に大きな影響を与えています。材質が硬ければ、管内の音波の反射はよく鳴りますが楽器の振動は抑えられ、柔らかければその逆の現象が起こります。この兼ね合いを考え、長年の試行錯誤やプレーヤーからの要求により、現在のような様々な材質・メッキ等が存在するのです。
例えば金管の材質は真鍮(亜鉛と銅の合金)ですが、銅の割合によって、少ない方からイエローブラス、ゴールドブラス、レッドブラスなどがあり、それぞれ硬さと音色が異なります。一般的に亜鉛の割合が多くなるにつれて色が薄くなり硬度が増します。逆に銅の割合が多くなるにつれて赤みを帯び、硬度は低下します。一般的にはイエローブラスの方が、レッドブラスよりも音が明るく硬いといわれますから、楽器の硬度と音の明るさ・硬さには相関性がありそうです。この傾向は木管楽器についても同じです。
ここで、「よく響く」ということについて考えてみましょう。この表現はとても曖昧ですが、素人的には「楽器は少しでもよく響いた方が・・・」と思いがちです。ちなみによく響くための材料としては、一般的に材料のE(縦弾性係数:ヤング率とも言う)/ρ(材料の密度)の値が高いものが良いと言われています。簡単に言うと、曲がりにくく密度が小さい(=軽い)材料が適しているということになります。
また、「よく響く」ためには、音の振動を楽器の内部で効率よく反射させる(=吸収しにくい)方が良いと言われています。これを「内部減衰率」ち言います。つまり「よく響く」楽器の材料としては、E/ρの値が高く内部減衰率が小さいものがいいということになります(理屈では)。
このことについては、佐田岳夫(Takeo Sata)氏が、「楽器と金属 Metallic Materials for Musical Instrument」(https://www.jstage.jst.go.jp/…/…/64/4/64_4_269/_pdf/-char/ja)という論文(1993.10)で詳しく述べられています。図は、佐田氏がこの論文中に使用されていたものです。
佐田氏も述べられていますが、このグラフを見ると、楽器の材料としては、ただ単に「よく響く」ことだけを考えているのではないということが分かります。材料の固さや密度、内部減衰率をある程度犠牲にしても、「好まれ求められる音色」に対応するために、試行錯誤が繰り返されてきたと言えます。
また材料やメッキ以外に、世の中には音色に変化を持たせるための様々な小物も存在します。リーフレック・バルブキャップ・ボトムキャップ・リガチャーなど・・・。リガチャーは必要不可欠な小物でしょうが、それにしては様々な形や材質・メッキのものがありますよね。こういったものは、上の話で言えば、楽器そのものの振動を変化させる(抑える)ことで、擬似的に内部減衰率を変化させるものと判断されます。楽器そのものを何本も買ったり、色んなメッキをかけてみたりすることが、普通の人にとっては経済的に難しいため、安価に音色を変化させるものとしては、充分に可能性がありそうです。
ただ1つ言えることは、音色に「変化」は生じても、それがよい「変化」になるとは限らないということ。取り外し可能で元の状態に戻せるものなら気軽に試せますが、メッキまで変化させてしまうと、その先の保障はない・・・と言わざるをえません。まあ、庶民の好奇心と探究心を埋めるものとしては充分かもしれませんね!!
数回に渡って書いてきた「音色」の話は、今回で終わりになります。「音色」についてはあまりにも要素が多いことと、「個人の好み」にも大きく左右されるので、結論はもちろんありません。理想の音を追い求めて一生試行錯誤することが、音楽の喜びなのでしょうね・・・。皆さんの追い求める理想に、ほんの少しでも役に立てたでしょうかねぇ・・・???
大編成で楽器を沢山使うような曲をやる場合には、レンタルでも何でもして必要な楽器を手に入れてくださいね。ここでは、どちらかと言えば小編成でどうしても人手や楽器が足りずに困っているバンドについての話をしようと思います。
「音の3要素」でも書きましたが、楽器の音色の違い=波の形の違いでしたよね。だから何かの楽器が無い場合(または奏者がいない場合)、その音を補うために、単純に他の楽器に音を足せば何とかなるものではありません。でも、同じ音域の音が出せる楽器を数本重ねて演奏することで、元の楽器がつくる波の形=音色に近い音を出すことが出来ます。
音色ではなりませんが、例えばアボガドをわさび醤油につけて食べると「トロマグロ」の味になったり、ミートソースに納豆を入れると「肉」の味になったり・・・食べ物に関しては、組み合わせ次第でいろんな味に感じてしまうのを、体験したことがありますよね。それを楽器でもやってみればいいのです。
しかし楽器でやる場合、音程が完璧に合っていることが大前提となります。音の3要素は、「音量=波の振幅の大きさ」「音程=波の数」「音色=波の形の違い」でしたよね。今は波の形を合わせたいわけですから、少なくても波の数は完璧でなければ、例の「うねり」が生じてしまい、関与している楽器の音がバレバレになってしまいます。また、音量に関しては、それぞれの楽器のバランスを絶妙にいじることでそれっぽい音に近づきますから、いろいろ工夫してみてください。好みもあるので、これは皆さんにお任せします。上手い料理をつくるのと同じで、なかなか楽しい作業ですよ!
音程や楽器の組み合わせ、バランスの調整以外で使える方法としては、ステージ上での「楽器の位置(プレーヤーの場所)」、「奏者の体やベルの向き(音を飛ばす方向)」、「楽器のベルと楽譜との関係(トランペットやトロンボーン等の音を、どれぐらい楽譜に当て、どれぐらい直接ホールに向けて吹かせるか)」などなど、考えれば沢山あります。時には、違う音域の楽器を組み合わせたり(トランペットの変わりにトロンボーンの高音とか、ホルンの変わりにユーフォやバリトンのの高音とか)、打楽器まで入てしまったり(管楽器のアタックの形をそろえるために、シロフォンやビブラフォンを入れると効果的な場合もあります)など、いくらでも工夫できるはずですよ。
ごちゃごちゃ書きましたが、何だかよく分からない人は、YouTubeなどで、野庭高校の「アパラチアの春」を聴いてみてください。特に後半のピアノの部分では、完璧な音程から生じる全パートの音があまりにも溶け合いすぎて、何の楽器が演奏しているのか全くわからない状態(完全に弦楽器の音に聴こえる!!)になっています。何度聴いても背筋がぞくぞくし、涙が流れるのは私だけではないと思います・・・。
あまり明確な結論に至らず、すみません。でも完璧な音程とバランスと楽器の組み合わせ、そして奏者全員が共通の音のイメージを持つということが、聴衆にすばらしい錯覚(無い音)を与えるのだと思います!
音、特に和音を語る上で、「純正律」と「平均律」の違いは、避けて通れません。しかし、それを一生懸命に説明すると、音楽嫌いが増えてしまう(どうしても少し難しくなるので)。だからここでは、難しい話し抜きで、この違いを「なんとなく」感じてもらいましょう!!
まず「純正律」ですが、波(=音)が1個、2個と自然に数を増やしていく時に出る音(自然倍音といいます)を用いてつくった音階です。お互いの波が強めあい、「1+1=2」のような関係になると、音は響くのでしたよね。そうなるためには、和音の第1音と第3音、第5音の周波数の関係が、できるだけ簡単な整数比になれば、波が同じところで山や谷となり、響き合いそうです(比が複雑になっても音にはなりますが、山と山、谷と谷が重なる確率が少なくなり、あまりよく響かないということになります)。
ところが、こうしてできた自然倍音の階段(半音階)は、階段と階段の間隔(つまり半音から半音までの段差)が一定ではないのです。だから、このままのチューニングで他の調の「ドミソ」を吹いてしまうと、階段の段差の微妙な違いにより、波の山や谷のピーク地点がずれてしまうのです。それが連続すれば、お互いの音がお互いの音を消しあってしまうから響かないし、例の「うぉん うぉん」といううなりが聞こえてしまいます。
そこで考え出されたのが「平均律」です。「純正律」で求められる、調ごとの微妙な階段の段差なんか無視してしまって、平均値にしてしまおう!という妥協の産物が、「平均律」です。「B♭の音は440Hzではない」にも書きましたが、1オクターブ間にある12個の半音の階段をすべて等しい段差にしてしまうのです。440HzのAの音を基準にすると、その段差(半音あたりの音程の違い)は
この「平均律」の代表がピアノです。ピアノでドミソを鳴らすと、純正律からのずれに相当する各音の波の打ち消し合いが、「うわわわわわわわわわわわぁぁぁぁん」となって、うなって聞こえます。これを聞いて、ピアノの音を「足を開いて座っている中年のおばちゃん」と表現した人がいるそうですが、その微妙なうなりがピアノ独特の響きであり、一概に毛嫌いするべきものでもありません。
和音の話をしたらきりがないですが、楽器を演奏する以上、とりあえず「長三和音」と「短三和音」の違いと性質ぐらいは頭に入れましょう。逆にそれ以上の話をしても、演奏上はあまり効果がないと思うので・・・
長三和音とは、第1音と第5音の関係が「完全5度」で第1音と第3音の関係が「長三度」の和音です。
短三和音とは、第1音と第5音の関係が「完全5度」で第1音と第3音の関係が「短三度」の和音です。
もう少し分かりやすく言うと、長三和音がドミソなら短三和音がドミ♭ソです。
分かっている人には当たり前の話ですが、そんなことを知っていても上手くはなりません!!大事なのは、この2つの和音の違いは、第3音の半音分(階段1段分の高さ)だけと言うことです。
ということは、長調であれ短調であれ、骨格となる第1音と第5音は全く変わらないのです。第1音の周波数を1.5倍にすると、この第5音になるのですが、数字の関係が1:1.5=2:3なので、とてもよく響きます。だから「完全」5度と呼ばれるわけですし、この2つの音がきちんと鳴らせないと、和音にはなりません。
和音の練習をするとき、第1音の次に第5音を鳴らし、安定したところで第3音を鳴らすのは、5度の骨組みをつくって、そこに第3音で「色」をつけていくためです。
和音が合っている=和音が曲に合っている ではなく、和音が合っている≒和音が曲に合っている
なのです。
だから、音楽の色気をつくるのは第3音なのです。3音の使い方を間違うと、長調なのに悲しくなったり、短調なのに明るくなったり・・・これ以上は言わなくても想像がつきますよね。
ハーモニーディレクターなので機械的に純正律の和音を出せば、全くうなりも生じずにとてもきれいに響きます。皆さんのバンドで、ほとんどの音で純正律の響きが確実に出せたら、それだけでかなりのいい賞がもらえますよ。でも、ここではさらに欲を出してみましょう。
音程は合っていて「うなり」も聞こえないのに、各楽器から出された倍音が完全に共鳴し合っていない(つまり波があっていない)ということに気づきます。「とりあえず音程は合っているのに、今ひとつ響かないバンド」の状態です。これは、大枠では音程が合っているけれど、細部を見たらずれているためで、より響く和音にするためには、細部、つまりより高周波数の波(出している音の何オクターブも上で響いているような音)を合わせる必要があります。
この高周波数の波は非常に、高いところに存在します。高温のほうが遠鳴りするためです。ですから、さらに和音に磨きをかけるためには、「もっと高いところで音を聞け!」と指示をするのです。そうすると生徒の意識は本当に高いところに行き、この高周波数の倍音を聞くようになります。
そこまで意識できるようになると、単にうなりが聞こえないから「合っている」ではなく、その空間に鳴っている音がとても「きらびやか」に聞こえます。どんなに防音の部屋で演奏していても、響くホールで演奏しているように聞こえるはずです。
この感覚を体験すると、あとはどんな和音や曲になっても、それを求めようと生徒が勝手に耳を使い出します。そうなればこっちのもの。まめに「あの感覚を思い出せ。」と言うだけで、それ以降は生徒が勝手に上手くなってしまいます。
次の2つの図形のうち、より正確な長方形に見えるのはどちらでしょう?
全員ではないと思いますが、多くの人が、①の方が正確な長方形っぽいと答えるでしょう。まっすぐなものをまっすぐに見せるためには、まっすぐよりほんの少しだけ凹形のほうが効果的なのです。この錯覚は、建築物や家具、絵画など、日常的にも利用されています。
これを和音の3音として考えてみましょう。「純正律より響く和音」で書きましたが、実際の音よりも高い音を高い視点で感じ取るのが、プレーヤーには大事です。それを常に感じ、生徒にも意識させるのは指導者の務めですが、もう少しわかりやすい指摘方法はないでしょうか?
そうして意識された和音の第3音を、根音と5音が鳴っている状態で吹かせてみてください。すると、「和音がツボにハマった!!」という感覚が得られるはずです。根音と5音の安定関係を、音程の構造的に邪魔しないからです。もし3音が②のような形だったら、その上下にある根音と5音までが正しく重ならずにゆがんでしまいますよね。これを曲全体に用いることで、バンドの音は非常に安定した品のいい大人の響きになります。一般の部の全国大会の音という感じでしょうか?一般の方々のように演奏経験が長いと、無意識のうちにこのような感覚が身につくものですが、中高生にそれを求めるのは無理。そのときにはこの指示が役に立つはずです。
このような感覚と、「純正律より響く和音」で書いたようなきらびやかを併用することで、より磨かれたサウンドが生み出されます。
中学生のころ、顧問の先生に「もっと1つ1つの音を長くしっかり吹け!」と言われ、じゃあ、どう吹いたらいいのかと思った私は、プロのデモ演奏をじっくり聞いてみました。ところがプロの方々も人間ですから、それなりにブレスはしているし、その瞬間は音が途切れます。なのに、曲全体としては何の違和感もありませんでした。なぜだろう?? 当時の私にはわかりませんでした。
もちろんプロの方々はブレスが上手く、曲全体の中でのフレーズが意識されているためであることはわかります。しかし、ここではもう少しこの理由を分析してみたいと思います。次の図を見てください。
ある人が音①を演奏していて、ブレスをしたとします。ブレスの途中には音が出ないはずですので、その部分はブラックボックスにしてみました。音の流れ①を聞いてきた聴衆は、ブレスの後には音②と音③のどちらを期待するでしょうか?
特殊な表現記号の前後は例外ですが、普通の人間は短いブレスの後に音②を期待しますよね。そして期待通りの結果が得られると、それで満足してしまうのです。つまり、聴衆が感じていた音の流れが、プレーヤーのブレスという自分勝手な行動によって生じるブラックボックスに遮られても、次に出る音が期待通りの②であると、音が出なかったブラックボックスの部分のことを忘れてしまうのです。上手なプレーヤーは、②の音を出すことが身についており、よほどの場所ではない限り、特に意識しなくても音やフレーズが途切れて聞こえることがないのです。プロは肺活量がめちゃくちゃすごくて・・・なんてことは、まずありません。
コンクールの講評などに、「フレーズ感がない」と書かれることがよくあります。フレーズとは曲中の音の流れのまとまりのことで、規則正しく数小節ごとになっている場合もあれば、そうではない場合もあり、またいくつかのフレーズが合わさって1つの大フレーズを構成している場合もあります。フレーズについて書いたらきりがなくなるので、ここでは、そのつなぎ目に注目してみましょう。フレーズ感がない理由の大半は、このつなぎ目の意識がないわけですから・・・
フレーズ内を充分に歌いきるのももちろん大事ですが、曲全体の中で重要なのは、このフレーズのつなぎ目を担当する人のセンスです。この人の演奏次第で、フレーズ感が決まります。まずは今演奏している曲について、フレーズの切れ目とそことつなぐ人をきちんと確認してみましょう。
昔、曲の相談に乗ってくださった加養先生が、「いい曲って、音を聞かなくても、スコアを見ればなんとなくわかるんだよねぇ・・・。」とおっしゃっていました。もちろん先生ほどの方ですから、当然のこととなのでしょうが、私なりに何か法則性のようなものを見出せないかと、数年間、考えていました。「いい曲」という概念すら明確にさせないで、こんなことを書いても仕方がないのですが、私なりには次のような結論を得ました。
フレーズ間に音があるのに、つながっていないから、下から覗くとところどころに白い穴があるんですよ。穴だらけのパンツをはいているのです。つまり、フレーズとフレーズをつなぐための音にまでしっかり配慮されておらず、そのまま演奏したら、フレーズのつなぎ目で音が極端に薄く感じたり、音の流れが途絶えてしまい、間が抜けた感じになってしまうということです!!あれっと思って、他の曲のスコアもいろいろ覗いてみましたが、曲のテンポなどには関係なく、名作(長年にわたり愛され演奏され続けている曲)には、そういう部分がない・・・。ゆっくりの部分でも、下から覗くと楽譜が真っ黒なんです。楽器間の音の受け渡しやそのタイミング、バランスが絶妙だからでしょうね。そして、このスコアを再びゆっくり正面から眺めると、黒かった部分から少しずつ音符の流れが見えてきました。目から鱗が落ちたような気がしました。
ちょうど、飛び出す絵本を初めて見た時のように!!
「フレーズのつながり」や「いい曲はスカートめくりすれば分かる!」にも書きましたが、こうした曲や音のつながりについてのプロフェッショナルがいます。それは・・・いろいろな植物!!みなさんは、植物を真上から見たことがありますか?ありそうだけど、実は意識して見たことのある人は少ないのではないでしょうか・・・。ま、簡単なことなので、実際に見てみてください。ここでは説明のために写真を使います。
クリンソウ | ナンバン | バジル |
さて上の写真は、「クリンソウ」「ナンバン」「バジルの芽」です。横から見るとこんな感じ・・・。花もきれいなのですが、皆さんに見てほしいのは「葉のつき方」です。1枚の葉を「1つの音」または「1つのフレーズ」だと思ってください。音楽全体の中における、ある1つの音の意味や、ある1つのフレーズの意味を理解しないと、上の写真のようにお互いの関係が見えず、バラバラに聞こえてしまいます。そこでこれらを上から覗いてみます。すると・・・。
クリンソウ (真上から) | ナンバン (真上から) | バジル(真上から) |
お互いの葉がほとんど重なることなく空間を満たし、地面が見えないほどです。もしどこかの葉を1枚でもちぎり取ってしまうと、そこに空間が出来て地面が見えてしまう・・・。でも、もしこの「葉」がフレーズを構成する「音」であったり「フレーズ」そのものであったらどうなるでしょう?
もし「葉」が一人一人の「音」だとしたら、たった1つなかったり、ほんの少し小さかったり短かったりするだけで、隙間の空いたサウンドになってしまいます。また、もし「葉」が1つの「フレーズ」だとしたら、曲全体がつながらなくなり、下手すれば音楽という植物が枯れてしまいます・・・(ToT)。
コンクールの講評で、「音が短い」「フレーズ感がない」と書かれたことはありませんか?私も若い時にはこれらの意味することがよくわかりませんでした。もちろんこれらの課題を解決する要素は「音の長さ」だけではありませんが、「音と心の問題」にも書いてあるように、少なくても本番では音は必ず短くなります。そんな事実や「音の終わり(リリース)の大切さ」(いい女は後姿が美しい・・・ん?)にも書いたような内容を参考にしていただくと、今年の夏はこれらの問題が少しは克服できるかもしれません。
私はスタードラフトで「きゃりーぱみゅぱみゅ」を初めて見た時から、彼女が大好きになりました。顔はもちろんですが、計算しつくされた発言や言動が世間をなめているようで、その溢れる才能に、たまらない魅力を感じます。Lineの公式アカウントで、唯一登録している人でもあります。ま、そんなことはいいのですが、この「きゃりーぱみゅぱみゅ」、大好きなのに、上手く言えない・・・かならず噛んでしまう・・・。私だけではないはず。テレビ番組の司会の方すら、少なからず噛んでいますよね。
ところが・・・
これは何かの番組ネタなんだと思いますが、ドラえもんが道具を出す時のような感じで「きゃり~~ぱみゅぱみゅ~」と言うと、だまされたように噛まずに言える!!知らなかった人は、まず声に出してやってみてください。
せーのっ!
ほらね、噛まなかったでしょ(笑)。
「ぱみゅぱみゅ」じゃないけれど、このテクニック(というほどのものではないかもしれませんが・・・)は、細かな音符を明確に演奏する際に応用できます。
細かな音符をかなり速いテンポで演奏することを考えてみましょう。はじめは音の並びを確認しながらゆっくり練習し、しだいにテンポを上げて指が勝手に動くようになるまで頑張ります。まあそこまでは自分で頑張ってください。でも指が回っているだけでは、全部の音がきちんとは聞こえません。まあ、何とかぱみゅぱみゅとは言えてるけど、少し噛んじゃってる状態でしょうか?そんな時に、あなたやバンドを助けてくれるのが、ドラえもんの「きゃり~~ぱみゅぱみゅ~」なのです。
ドラえもんの「きゃり~~ぱみゅぱみゅ~」では、「きゃり~~」の「~~」で十分に息と心のスピードが上がり、次の「ぱみゅぱみゅ」の最初の「ぱ」に息がしっかり入り発音も強くなるために、噛まずに言えるようになります。逆に、私たちが普通に発音すると「ぱみゅぱみゅ」と言えないのは、ぱみゅぱみゅと発音する直前までの準備不足からくる、最初の「ぱ」の勢い不足のせい・・・。つまり、楽器で細かな音符(ぱみゅぱみゅ)をはっきりきれいに演奏するためには、そのパッセージの前(「~~」に当たる部分)で息と心の圧力をしっかり上げ、最初の音(「ぱ」に当たる部分)をかなりしっかり発音することが大事なのです。あとは指が勝手に動くわけですから(そこまでは練習してね!)、ロングトーンをしているように息を送り続ければ、どんなに長く細かなパッセージでも、ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅ・・・・・と言い続けることができます。
かなりまじめな気持ちで書いているのですが、ぱみゅぱみゅぱみゅぱみゅと何回も書いていると、どうも嘘っぽい文章に見えてしまいます(笑)。でもブリティッシュブラスバンドやバリチューバアンサンブルを中心に演奏する私の楽譜は、細かな音符でいつも真っ黒・・・。「きゃり~ぱみゅぱみゅの法則」がかなり役に立っています。
最後になりますが、この記事の「きゃりーぱみゅぱみゅがあなたのバンドを上手くする!」って副題、間違ってるかもしれませんね・・・。そう!本当にあなたのバンドを上手くするのは、「ドラえもん」なんですね。きゃりーぱみゅぱみゅこと、きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅは、私が好きなだけなのかも・・・。
まずはこの内容を、大きな声に出して音読してみましょう!噛まずに読み切ったら、あなたはきっとプロになれます!!!
よく在りがちのほほえましい光景です(笑)。でもじいちゃんは、なんでいつも出だしで遅れてしまうのでしょう?じつはじいちゃんだけではなく、こんな人って中学や高校の吹奏楽部にも必ず数名いますよね。その理由と改善策を考えてみましょう。
時速100kmの車にぶつかったら、まず間違いなく命を落とします。そこまで行かなくても、時速10キロの自転車に飛び乗っただけでも、その瞬間は体が後ろに持っていかれることでしょう。これは、慣性の法則が働くからで、静止している物体がそのまま静止し続けようとするためです。でもこれって、じいちゃんのカラオケと同じことですよね。じいちゃんは、3、4と言われている間に、テンポの準備ができなかったのです。
ではどうすればよいのか?簡単ですよね。時速10キロで自分が移動していれば、同じ向きに移動している自転車の速度(相対速度)はゼロになるはず。つまり、予備拍で完全にテンポの流れをつかむことが、出だしがずれないポイントなのです。
当たり前すぎるかもしれませんが、皆さんは普段の練習のとき、出だしを何に合わせていますか?指揮者の先生の1拍目の打点や、メトロノームのカチッという音ではありませんか?もしそうなら、音楽の流れに対する皆さん自身の相対速度はゼロ、つまりじいちゃんのカラオケと同じです。
では何にあわせるのか?それは、指揮者の予備拍のテンポの流れであり、メトロノームのカチカチの流れに合わせるのです。音を出す瞬間に、音楽と同じ速さで歩いていることが大切になります。オーケストラの指揮者の打点と出だしが一致しないのは、テレビを見ていればわかります。団員が皆、指揮者が意図するテンポの流れの中にいるのです。だいたいメトロノームのカチッという音が、メトロノームの針がどこに来たときに出ているのか知っていますか?決して一番端ではありませんよ!!
もうひとつ大事なことがあります。それは、音楽は1から始まるのではないということです。次の図を見てください。
しらかば~あおぞ~ら、み~な~みか~ぜ~
楽譜には五線の他に、音符や休符や表現記号など様々なものが書かれています。そして私たちは演奏する際、どうしても実際の音である音符や、表現記号ばかりに注目します。休符の存在をないがしろにして・・・。
私は以前、ある書道家の方に、同じ文字を書いた2人の作品を見せられ、「どちらが優れているか?」と聞かれたことがあります。正直、全くわかりませんでしたが、その後に、「書道は全体のバランス、つまり白と黒のバランスが大事なのだ。」ということを教わりました。その言葉を聞いて以来、書道の作品を見ても少しだけ優劣がわかるようになりました。
書道の黒と白に当たるのが、音楽の2大要素である、音と静寂(休符)です。そのバランスがいかに美しいかで音楽の価値が決まります。演奏する音の前に休符があるときには、その休符には必ず意味があり、その音を誘導しています。音の後ろに休符かあるときには、その音のリリースや次のフレーズへのつながりを教えてくれています。
あまり抽象的なことを言っても仕方がありませんが、休符の重要性を意識させるために、「休符は休みではなく、静寂という音の長さを表す記号だ。」と言ってあげるといいと思います。だから曲が始まったら、休みなどはありません。また、静寂という音符を演奏している影で、必ず他の楽器が音という音符を演奏していることにも気づけるようになると思います。
マーチのようにテンポが常に一定な曲では、メトロノームの「カチッ、カチッ」に拍の頭を合わせればいいけれど、テンポが揺れる曲や極端にテンポが遅い曲などでは、いったい誰の何に出だしを合わせたらいいんだろう?誰もが1度は抱く悩みではないでしょうか?
下手なバンドは大体この疑問が解決されないままコンクールに臨み、ズレズレの演奏をするか、出だしが怖くて音が出せず、スカスカの演奏をするかで撃沈します。また、能力のない指揮者は、何とか自分の指揮に合わせてもらおうとして、無駄な予備拍を振ったり不必要でダメな指示を出したりします。皆さんも身に覚えはありませんか?
よくオーケストラでは、「プレーヤーは指揮に合わせているのではなく、コンサートマスターの動きや指示に合わせている」という言い方をされますが、これは正しいけれどわかりにくい話。吹奏楽ではコンサートマスターが必ずしも第一バイオリンの場所にいるわけでもなく、コンサートマスターの役割もそれほど明確ではないため、あまりピンときません。それに、テンポが揺れる曲やゆっくりの曲では、マーチの指揮のような打点はありません。ではどうしたら・・・?
究極的にはたくさんの音楽に触れて、音楽の流れを理解するしかないのですが、学生さんのバンドにそれを求めるのはほとんど無理。そこで、ちょっとボール(バレーボールやサッカーボールなど)を用意してみましょう。そしてゆっくり大きく連続でついてみましょう。同じテンポでボールをつき続けるためには、ボールが最高到達点に達する本の少し前からボールに触れ、最高到達点を過ぎたあたりから少しだけ下向きに力をいれるはず。するとその直後にボールが手から離れ、地面に向かって自由落下していきます。このボールの動きとテンポの流れは同じです。そして皆さんが楽器に息を入れ音を出すのは、ボールが手から離れる瞬間!! 嘘だと思ったら、ゆっくりな曲に合わせてボールをついてみてください。「おお~っ!!」って思うはずですよ。
ルバート系の曲の出だしが合わずに困っている顧問の先生がいたら、何はともあれ部員みんなで「あんたがたどこさ」でもしてみてください。ゆっくりのテンポでね!
でも実際の演奏中には、ボールはつけません。そのときにはどうするか?
答えは簡単です。プレーヤー全員がボールになればいいのです。テンポにあわせ体で楕円運動(というと一番イメージしやすいと思います。本当はメトロノームのような単振動の動きなのですが・・・。まあ、円運動も楕円運動も側面から見れば単振動だから同じことです。)して見ましょう。最初は音なんか出さなくてもいいですよ。この動きを合わせるだけで、音の出だしは絶対に合うようになります。自分の自然な動きと合わない瞬間に音を出すことは、実は不可能なぐらい難しいことなんですよ。コンクールなどでやたら動くバンドは嫌われてしまう場合もありますが、少なくても全国で金賞を取るような団体は、動きを見るだけでわかるものです。
一度試しに音量をゼロにして、全国大会のDVDなどを見てみてください!
あなたの耳で判断するより、正しい結果予測ができるかも知れませんよ(笑)
1 世界中のメトロノームはまちがっている?
「メトロノームって、どこで音が鳴ってるかわかる?」
知人や指導に行ってる学校の生徒さんなど、いろんな人に聞いてみました。「両端」「真ん中」という回答が多かったのですが、どちらも不正解。実は針が両端に到達する少し前に「カチッ」と鳴っているのです!ゼンマイという動力と振り子(メトロノームの針の最下部にはおもりがついていて、振り子時計と同じ原理で動いている)を用いてメトロノームを作ると、構造上そうなってしまうのですが、だったらどこにテンポを合わせたらいいのでしょう?
熱血顧問の先生や生徒指揮の方が、マーチなどの練習でなかなかテンポが安定しない時に、「しっかりメトロノーム見て!」なんて怒っている姿を見たことはありませんか?課題曲にマーチを選んでしまった年などは、そんなシーンに10回くらいは出会うのでは?でもメトロノームの打点は両端や真ん中じゃないから、それに合わせられる方が異常です!
これはメトロノームがおかしいのではなく、メトロノームという機械を正しく理解していない人間の問題なのです。メトロノームは見て合わせる機械ではなく、規則正しく「カチッ」という音を出すための機械で、針はその速さを変化させるためのおもりを固定し、下についているおもりとのバランスを調節するための道具でしかないのです!だから「しっかり見て!」は、意味のない注意ということになります。
2 メトロノームは音さえ出ればいいのか?
だとしたら、針がなく音だけが出るメトロノームであればいいのかというと、なんとなく違和感を覚える人が多いでしょう。なぜなら、メトロノームの針の動きは、それはそれで指揮者の動きに近い感じがするからです。「音の科学的理解」の中の、「なぜ出たしがずれるのか?」という所で触れていますが、じいちゃんのカラオケやバンドの出だしが合わないのは、音を出す前のテンポの流れをとらえていないからです。ある程度以上のリズム感を持っている人であれば、音だけが出るメトロノームでもテンポの流れをつかむことができますが、バンド全員ができる訳がありません(全国大会常連校レベルでもね!)。見てはいけないメトロノームの針にも、それなりの役割や意義はあるのです。さて、この問題を解決するにはどうしたらいいのでしょう…?
3 正しいメトロノームとは?
そもそも何のためにメトロノームを使うんでしたっけ?本番でメトロノームを使うわけではないですよね。おそらくその目的は、
①一定のテンポで演奏する。
②指揮者の代わりにテンポを刻んでもらう。
この2つであるはず。つまり指揮の動きに近く、なおかつ一定のテンポを刻むメトロノームであればいいわけです。そのため指揮の動きを分析してみましょう。
普通、何拍子の曲であっても、指揮者の打点には次のお約束があります。
①指揮棒が最下点に来た瞬間が「打点」である。
②向きはどうあれ(上向きや下向き)、最下点での指揮棒の速度が最速になっている。
③打点と打点のちょうど真ん中のタイミングで指揮棒が最上点に達し、その時に上下方向の速度がゼロになる(1番高い地点で一瞬指揮棒の動きが止まる)。
この3つを満たす運動は…?やはり振り子なのです。振り子は「単振動」という運動で、簡単に言うと、等速で円を運動する物体を真横から見た(上下方向の動きだけに注目)したものになります。こんな感じ。
等速円運動と、それを真横から見た時の位置関係 | 赤⇒等速直線運動 青⇒単振動 |
まだ、指揮っぽくないですよね。
指揮の運動は、もう少し正確に言うと、青い球の運動(単振動)の絶対値(マイナス部分がすべてプラスになる)です。こんな感じです。
青い方が指揮の動き(単振動の絶対値) |
※この図は、サイト「わかりやすい高校物理の部屋」内の、「単振動」のページよりいただきました。引用可であるが、著作権を放棄したわけではないとのことですので、この場を借りて紹介させていただきます。とてもわかりやすく説明してありますので、興味のある方はぜひご覧ください!
どうです?指揮っぽいでしょう!!
ゼンマイ式のメトロノームが見た目的にダメなのは指揮者の打点に当たる中央部で音が出るように作られていないから。つまり、指揮者のような動きをし、打点に当たる中央部に針が到達した時に音が出るメトロノームが、「見ても」「聴いても」正しいメトロノームなのです!!
4 正しいメトロノームに近いアプリ
先に書いたように、ゼンマイ式のメトロノームでこの状態を作ることはできません。でも今の時代ですから、そんなアプリがないものかとありとあらゆるメトロノームアプリをダウンロードして試してみました。アプリに多いのは「両端で音が出る」というタイプのものでしたが、次の2つのアプリについてはかなり正しいメトロノームと言えると思いました。
①METRONOME STAR
星が揺れてリズムを刻むメトロノーム。Yuki Yasoshimaという方がつくられたもので、無料のアプリ。とても可愛らしいデザインで、一見オモチャっぽいのですが、星の動きが最も速くなるき画面の中央部で音がなるように作られている。偶然かもしれませんが、作者が正しいメトロノームというものを理解して作られたのだとしたらとても素晴らしいと思います。使い勝手もよく、見て音も聴きながら個人練習をするには最適のアプリと考えます。いつも私の隣でユーフォを吹いている音大卒業の方も、このアプリを使用されていました!
②TRUE METRONOME
このアプリには無料版と有料版があるが、有料版には「音の位置」を指定できる機能がついています。「センター」「エッジ」「コーナー」の選択があり、「センター」を選択すると中央部で音が出る理想のメトロノームになります。「エッジ」では普通のゼンマイ式のメトロノームと同じく、両端の少し手前で音が鳴り、「コーナー」では両端で音が出る。正しいメトロノームを追求したかなりマニアックな方が作られたと思われますが、正しいメトロノームとそうではないメトロノームを比較し理解したい人にはオススメのアプリです。
5 身近にある正しいメトロノーム
正しいメトロノームは、もっと身近はないのでしょうか?そしてそれを会得する方法はないのでしょうか?
ありますよ~!
ここでもう一度、指揮者の打点を見直してみましょう。そしてそんな運動をするものはないか、じっくり考えてみましょう。
答えその1
「音の科学的理解」の中の「テンポが揺れる曲での出だしはどこ?」にも書いてあるように、ボールを床につく運動です。文章の中では主にブレスのタイミングと打点の関係を説明していますが、指揮者の全体像はあえて見ず指揮棒の動きだけに注目すると、ドリブルしている時のボールの動きと同じになっているはずなのです。ということは、みんなでボールを持って、音だけが出るメトロノームに合わせてドリブルしてみる!なんていうのが、なかなか効果的な練習になるわけです。
答えその2
待てよ…。もっともっと身近な「正しいメトロノーム」がありますねぇ…。それはあなた自身です。もう少し突っ込んで言うと、あなた自身の歩行です。歩行の際には上下動が伴います。前に出した足が地面に触れる瞬間にその足の下向きの速度は最高になり、その時に足音が発生します。そして次の足音がする瞬間(反対側の足が地面につく瞬間)に最初の足は最高点に達し、上下方向の速度がゼロになります。お~、これこそ見た目にも音的にも最も正しく、指揮者の動きとも完全にシンクロした究極のメトロノームじゃないですか!!
6 テンポに正確な演奏をするためには?
ということは、歩きながら曲を歌ってみるというのが最もいい練習方法と言えそうです。あれ?なんか話がおかしいですよね?もともとマーチって行進するための曲なのに、コンクールで上手に演奏したい!なんてことばっかり考えているものだから、歩くという本来の目的がわからなくなってしまっているのです。
マーチング経験者の方は歩きながら演奏することの大変さをお分かりでしょうが、何もそうしろというわけではありません。練習の行き帰り、通学途中、ありとあらゆる「歩く」という作業を行う際に、自分の体の動きそのものが指揮と同じなんだと意識するだけで、ものすごい練習になるのです。マーチだけではなく、ゆっくりな曲や速い曲などいろいろありますが、たまにはそんなテンポで歩いてみるのもいいじゃないですか。
部員全員で音だけが出るメトロノームに合わせ足並みを揃える!!そんなことに真面目に取り組んでいるうちに、部活そのものの足並みも、部員全員の心のテンポも揃うはずですよ。
音は、密度の小さい空気の振動として私たちに伝わるため、その速度は遅いです。秒速330mほど。そのため、校舎に反射して聞こえる音に時差を感じるし、やっほ~と山に向かって叫んでみたりもしますよね。しかし、楽器を演奏する際に、これを考慮しなくてもいいのでしょうか?
音のスピードは秒速約330mですが、正確には、秒速(331.5+0.6T)です。Tは温度ですから、温度が高いほど、音は速く進むということになります。これが、コンクールの出演順と成績に大きな影響を与えます。
コンクールの話の前に、お寺の鐘の話をします。都会の方はわからないかもしれませんが、お寺の鐘は、昼間に比べ夜に聞こえやすいのです(日中は人間の活動による様々な騒音があることなどは無視して考えてください)。日中は太陽光の照射により、地表面が温められるため、上空より地上付近の方が温度が高い状態になります。音は、温度が低いほうに曲がって進むため、地上付近で鳴らされた鐘の音は、温度が低い上空のほうへと曲がり、散乱してしまいます。これに対し、夜には日中に暖められた空気が対流によって上空に移動し、地表付近よりも上空の方が高温という状態になります。すると音は一旦は上空に向かって飛んで行っても、次第に温度が低い地上のほうへと曲がり、より遠いところまで到達することができるのです。
これと同じ現象が、コンクールの後半に起こります。コンクールの後半になると、観客数も増え、ホール天井付近の温度が上がります。すると、前半には天井に向かっていった音が、後半には温度が低い審査員そしてホールの観客に曲がり、結果的によく聞こえるようになるのです。
演奏自体の基準も決めにくいため、前半の団体には高得点をつけにくいという心理的要素の方が高いのでしょうが、ホールの状態をも味方につけることができる後半のほうが、やはりいい成績が出るようです。もっとも後半には、観客数が増す分だけ、音が吸われるというマイナス要因もありますが・・・。
集中力が低下したり、そもそもレベルがそれほどではないバンドでは、音が散漫に聞こえます。分かりやすく言うと、「音が左右方向に広がっていてまとまりがない感じ」に聞こえます。原因は簡単。楽器への息の入り方が広がり気味になり、唇やリードが効率よく振動しないため、頑張って演奏しているつもりでも楽器が鳴らず、結果的に倍音まで含めた微妙な音程にずれが生じ、それが不規則に強めあったり弱めあったりするためです。
原因1 息の角度(左右方向)
人は気合を入れて頑張ろうとすると、酸素を少しでも多く取り入れ体内の隅々まで届けるため、交感神経の働きで心拍数が上がり、呼吸が激しくなります。また酸素の入り口である口は開き気味になります。この状態で息を吐くと、口から出た息は、扇形のように左右に広がっていきます。体のことだけを考えれば理にかなったことですが、楽器を鳴らすということについて言えば、この現象は逆効果。楽器は(というより唇やリードは)、「ストローのような息」「遠くのろうそくの火を消すような息」の時に一番効率的に鳴ります(図①)。
例えばピンと張った輪ゴムがあったとして、一番よく響くように弾いてみましょう!と言われたら、皆さんはどこを弾きますか?多分真ん中を弾くのではないでしょうか。もちろん正解も「真ん中」です。真ん中を弾くとその振動がゴムの両端に伝わり、最もよく響いて大きな音になります(図②)
これは唇やリードについても同じことです。唇やリードも中心付近にまっすぐな速い息を入れることで最もよく響き、結果的に楽器がよく鳴ります(図②)。
原因2 音どうしの関係
楽器がよく響きお互いの音がよく聞こえるようになると、自分もその音に「合わせよう」という意識が生まれてきます。楽器がよく響いている分だけ、音が合わない時に生じる「うぉん、うぉん」といううなり音も大きくなるため、それを避けるためにピッチも自ずと合うようになっていくのです。その結果、ホール全体がよく響くようになるため、「音が広がってまとまりがない感じ=音波がいたるところで不規則に強めあったり弱めあったりする現象」が解消されるのです。
こういった状況を生み出すために言う言葉はただ1つ、「音が広がらないように、楽器の中心に向かってまっすぐな速い息を入れましょう!」です。
練習方法も簡単です。人差し指を立てたままで腕を伸ばし、顔の前に持ってきます。そして指の先をめがけてまっすぐな速い息を吹きかけます。ストローを加えた状態で息を通し、そのままの感じで楽器を吹かせてみるのも有効です。
「同じ水量であれば、広い川より狭くてまっすぐな川の方が流れが速いでしょ?」と言えば、小学生にも十分理解してもらえます(実験済です)。それと同じ息を楽器に入れてみましょう!と言っただけで、バンドの音は一瞬で変わりましたよ!!(実験済です)。