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音の心理学的理解

タイトル

サブタイトル

内容

耳の慣れ

同じ音量でより大きく(小さく)聞かせるには?

人の耳はごまかされる

心理と音程

音は必ず高くなる!

棒高跳びとバンジージャンプ

1つの音中の心理変化

1つの音の中で意識はどう変化するか?

音はきちんと育てて初めて響く

クリアな響きときつい演奏の差は?

生みっぱなしの音はきつくなる

上ずりと下ずり

どうせ下手なら上ずれ!

下手なやつほど音が低い



 


同じ音量でより大きく(小さく)聞かせるには?
人の耳はごまかされる


 人の行動の中に、「慣れ」というものがあります。同じような刺激を与え続けられると、それを感じにくくなるというのが慣れです。誰かと手をつないでいると、そのうちつないでいることを感じなくなったり、臭いトイレに長く入っていると、あまり匂いを感じなくなったり・・・誰にでも経験はあると思います。これをコンクールなどに利用しない手はありません。何をするのかというと・・・

 

もちろん上手いバンドではやっていることなのですが、演奏前に完全に「静」の空間をつくるのです。これは緊張感を高めるという心理的効果も大きいですが、もうひとつの効果として、聴衆の聴覚をゼロにリセットするという効果もあります。演奏前の数秒では完全にゼロにはなりませんが、ほんの数秒でも効果はあります。聴覚が「静」の慣れることで、その後に出される音が、より大きくはっきり聞こえるようになります。課題曲の出だしの印象には、少なからず影響を与えます。

こうして大きな音量に耳が慣れてきたころに、曲の「静」の部分が登場します。そのころには耳が大きい音に慣れているので、しっかりとしたpを鳴らしても、客には小さくかつ響のあるpとして伝わるのです。

曲の冒頭の「静」が、大きな音にも小さな音にも磨きをかけるのですね。上手いバンドは見た目も上手いものです。見た目は音に反映され、音は見た目に影響するのですね。


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音は必ず高くなる!
棒高跳びとバンジージャンプ


 ここでの話は、ある程度以上、楽器が吹ける状態を仮定しています(初心者のころは、楽器に対する息の量が足りず、ほとんどの場合、音程は下がり気味になります)。

 

楽器自体の癖や演奏者の癖で音程が低くなることもありますが、曲を演奏する際など、音は大抵の場合、高くなってしまいます。

まず、和音的に考えると、長3和音の第3音は、かなり低く演奏しないと純正律の和音が響かないのでしたよね。5音は平均率よりもほんの少しだけ(2セント)高い音程で演奏しますが、ほぼ平均率ぐらいの音程で正解なので、あまり気にしないとすると、長調の曲では、基本的に低めにコントロールするとサウンドがまとまります(もちろん細かく和音を分析すれば必ずしもそうとは言えませんが、ここでは大枠でとらえてください)。これの逆で、短調の曲では全体的に高めのコントロールが要求されることになりますが、次の内容を理解すると、そうとも言えないことに気づくはずです。

 

例えば・・・

ある音を演奏していて、次にその音の何度か上の音(どうせなら1オクターブ上ぐらいを想像してみてください)を出さなければならないとします。

 

 

ある音を演奏しているときには、自分の意識はその音にあるため、次の音はかなり上にあるような気になります。そんな気分のまま、次の音を出すために、図のように自分自身が次の音にジャンプしてください。理想的には、黒の実践のように、次の音にピタッと着地しそのまま演奏したいところです。しかし普通は、赤の実線のような軌跡を描いて次の音に移り変わってしまいます。つまり、何も考えないで次の音を演奏してしまうと、どうしても出だしが上ずってしまうのです。ある程度訓練された人であれば、瞬時に修正するのですが、それができないと、結局、上ずったままの高い音程でその音を演奏してしまうことになります。

 

次に、ある音から次の音に下がる場合を考えてみましょう。1オクターブの音の階段を、一気に飛び降りるようなことを想像してみてください。

 

この場合、次の音を出だしから正しい音程で吹くためには、演奏中の音が終わった瞬間にいっきに真下に飛び降りなければなりません。しかし・・・

上から真下に瞬時に移動することには、相当の恐怖心が付きまといます(笑)。それに、なんとなく演奏していると、次の音が思ったよりも下にあることを理解せずにジャンプしてしまうため、その出だしが必ず高くなります。そしてそれがそのまま修正されずに演奏されてしまうことで、やはり上ずったままの演奏になってしまいます。

 

つまり、なにも意識をしないで演奏すると、音は必ず高くなるのです!!

 

だから、バンドの指導をする場合、音程に自信がもてない指導者やパートリーダーさんは、まずその音を低めにとらせてみましょう!演奏者自身も、合わない音の答えは、大体の場合「下」にある(つまりほとんどの音が高い!)と意識しておくと、上手くいく場合が多いです。

 

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1つの音の中で意識はどう変化するか? 音はきちんと育てて初めて響く


 特に難しい楽譜を目にした時など、私たちは「なんとか音符通りに演奏しなければ!」という意識が働きます。その結果、音を間違えないように全神経を集中するわけですが、その結果、音の出だしだけに意識が行ってしまい、音の長さやコントロールなどは完全に忘れてしまいます。ちょうど、次の図のような感じです。

 

 

リズムどおりに正しい音を演奏すれば、それなりに曲にはなりますが、曲全体としては、「音が短い」「和音が響かない」「音が小さい(響きの時間が短いから)」というものになってしまいます。これは、私たちが、「音を生み出すこと」だけしか意識していないからです。

 

以前、「笑ってこらえて」で紹介されたことでも有名な安西先生が、「音は人間の子供と同じで、生み出すことではなく、育てることが大切なのだ!」とおっしゃっていました。それを聞いた時、私は、なんと素晴らしい言葉なんだろうと感動しました。

音は生み出し、丁寧に育てるからこそ素晴らしいものになるのです。

多くのプレーヤーには、このことが意識されていないように思います(私も含めて)。私たちは、ただ音を生み出す事だけにしか興味が無いのですよね()。もしこれが、人間の子供だったら大変大変()

 

以前、秋田山王中の木内先生も、「ほとんどのバンドは、音がかなり短いんですよ・・・」と話されていました。これは、純粋に音が短いということもありますが、それ以上に「音に対する意識が、音の最後まで行きとどいていない。」という意味もあると、私は理解しています。

 

1つ1つの音の長さとリリースの形を、もう一度考え直してみませんか?それだけで演奏はかなり変わると思います。

 


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クリアな響きときつい演奏の差は?生みっぱなしの音はきつくなる


 1つの音のなかで意識はどう変化するか?」で書いたとおり、私たちは「音を出す」事だけに興味があり、「音を育てる」ということを、なかなかしようとしません。その結果、音は短くなるし、出だしだけが意識されるので、音形もきつくなります。

 

 

バンド全員がこのような音で曲を演奏されると・・・想像がつきますよね。コンクールの講評で、「耳に刺さるきつい演奏」などと書かれるバンドは、だいたいこのような音形で演奏しているはずです。

 

これに対し、「クリアな演奏」とはどのようなものでしょう?

私たちは、「もっとクリアに出して!」などと言われると、どうしてもタンギングをきつくし、結果的に上図のような音形で演奏してしまいます。しかし、クリアな音の音形はこれではありません。

クリアな音とは、音形の基本である次のような形の音であり、そのアタックの音形を確実に90度にし、なおかつ他の奏者との出だしのタイミングを完璧に合っている状態の音を言います。

 

 

これを確実にするためには、「音の中身(コア)の充実」で書いたように、アタックの後、音が減衰しないようにしっかりとスピードのある息を入れることが重要です。正しい音形を常にふけるということが、やはり全ての基本になっているのですね・・・

 


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どうせ下手なら上ずれ!
下手な奴ほど音が低い


 「音は必ず高くなる!」の冒頭に書きましたが、ある程度以上吹けるプレーヤーは、科学的にも心理学的にも音程が高くなる可能性が極めて高くなります。しかしこれは、「ある程度以上」吹ける場合の話。楽器を始めたばかりであったり、まだあまりうまく吹けない人は、逆にほとんどの場合、音が低くなります。これは息が足りず、出た音を継続させるだけの息の量が楽器に供給されないためであり、誰もが通ってきた道だと思います。ひどい場合には、出した音がトロンボーンのスライドを伸ばしていくときのように、下がっていく〜 あ〜〜〜。

しかし・・・夏になればコンクールはやってきてしまうし、少子化の中、初心者に近い部員でもメンバーとして出場させなければならない事もあります。そんな時にはどうすればいいのでしょう?

人間は心理的に、音が上ずるよりも下がる方が嫌悪感を覚えます。ホラー映画の不気味なシーンに流れる音楽なども、フレーズの最後の音が下がることが多いのではないでしょうか?また、音痴の人の歌は、ほぼ例外なく本当の音よりも下に外れて、さらに伸ばしている音が下がっていきます。そんな歌手も増えてきましたよね・・・。

それならば、上に外すように指導してみるのがいいのではないでしょうか?なにも無理して外す必要はありませんが、ピッチが悪いと注意されるところだけでも、上に外すようにしてみればいいのです。音が下がる場合に比べ、音が上ずる場合の嫌悪感は、驚くほど少ないものです。それに下手な人にとって「上に外す」ことは意外に難しく、その心がけが、「音程や音量を維持しなければならない」という気持ちを育てることにもなります。

 


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