吉野地区の水生生物の研究

 


1.研究の動機

2.研究の仮説

3.研究の方法

4.研究の結果

5.考察

6.今後の課題と感想


 

1.研究の動機

 吉野川は、昭和30年頃には、吉野鉱山からの排水により酸性になり、一時はPH2.4といった記録も残されている。この時期は吉野地区の河川からも魚などが消えた。鉱毒水処理計画により、12億円以上もかけて水路をつくったりため池をつくったりしている。それらが雪で壊された時期もあったようであるが、現在は処理計画も順調に進んでいるようである。
 現在の吉野地区では、ホタルも生息しており、街灯にはヘビトンボも飛んで来ているので、水生生物も前よりはもとにもどってきていると思われる。水生生物の様子から、現在の吉野地区の水質をつかみたいと思い、本研究を行った。

2.研究の仮説

C 鉱山の排水の影響はほとんどないのではないか。
D 人間の生活の影響の方があるのではないか。

3.研究の方法

 環境庁水質保全局で毎年行っている「水生生物による水質の調査法」を利用して調査を行った。
 鉱山跡地と人家の多い地域の前後では、水生生物にどのような影響があるか調べた。
 調査に使った道具は以下のようなものである。
C 記録用紙 D 環境庁水質保全局のテキスト E えんぴつF ルーペ G ピンセット H 白いバット I 長靴
J 温度計 K サンプルびん

4.研究の結果

C 今回の調査で確認された水生生物は、次のような生物である。
T.きれいな水・・・ウズムシ類、ヒラタカゲロウ類、ナガレトビケラ・ヤマ トビケラ類、ヘビトンボ類
U.少しよごれた水・ナガレトビケラ・ヤマトビケラ類以外のトビケラ類・ヒラタカゲロウ・サホコカゲロウ以外のカゲロウ類
V.きたない水・・・サホコカゲロウ、ヒル類
W.大変きたない水・イトミミズ類

 どの時期でも水生生物はいるが、8月頃は比較的小さいのが多い。10月に なると、それぞれの生物が大きくなり、体長5cmのヘビトンボの幼虫も確認 することができた。

D その他の水生生物について
指標生物ではないものの、今回の調査で確認された水生生物は、次のような 生物である。
ガガンボ、ホトケドジョウ(吉野中前の吉野川)
モノアラガイ(吉野公民館前)
スジエビ(おびしゃく)
E それぞれの水生生物の分布や特徴について

    T.きれいな水の水質階級の指標生物について

 ウズムシは、きれいな水のところではよくみられる生物であった。それに対して、ヒラタカゲロウは、きれいな水であるにもかかわらず、なかなか見つけることができなかった。ヘビトンボも、よく見られた。

    U.少しよごれた水の水質階級の指標生物について

 トビケラ類は石の下に巣をつくっており、ほとんどの調査地点で採集できた。カゲロウ類も多く、ほとんどの調査地点では、最も数が多かった指標生物であった。調査地点No,7では、カゲロウ類しかいなかった。また、No,9では、トビケラ類がほとんどで、カゲロウ類はごくわずかしかいないというように、生物のかたよりが見られた。

    V.きたない水の水質階級の生物について

 人家が多いところには、サホコカゲロウが見られた。特に、吉野中前の吉野川には多かった。ヒル類もごくわずかではあったが見られた。

    W.大変きたない水の水質階級の指標生物について

 イトミミズ類が見られたが、数は少なかった。

5.考察

C吉野地区全体に水生生物は分布している。このことから鉱山の排水の影響は ほとんどないのではないかと考えられる。ただし、No,7のおびしゃくの下 流では、水生生物が非常に限られ、また、川底も赤茶色になっており、鉱山の 排水の影響が全然ないとはいえない。
D吉野地区の上流にあたる小滝地区の上流(No,3くぐり滝)と、太郎地区 (No,6と10)は水生生物の種類が多い。また、人家が多いところになる と、水生生物の種類が減ってきたり、サホコカゲロウなどのきたない水でも生 活できる生物がふえてくる。このことから、吉野地区とはいえ人間の生活や活 動の影響が出てきていると思われる。

6.今後の課題と感想

C季節による生物の変化はわからなかった。また、特に春先の調査ができなか ったので、今後は観測地点と時期を決めて毎年調査を行い、生物の変化を追っ ていく必要がある。
D自分達でスジエビを育ててみると、環境を維持することは本当に難しいこと がわかった。これからも吉野地区の環境に注目して行きたい。

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