地盤の液状化の起きる条件

〜 地盤に含む水と土の粒径との関係について 〜

 


1.研究の動機

2.長ヶ沢ダムの調査の様子

3.長ヶ沢ダムの調査のまとめ

4.地盤の液状化の起きる条件についての仮説

5.砂粒の分け方

6.液状化をつくり出す実験装置

7.実験方法

8.実験結果

9.実験結果のまとめ

10.考察

11.研究の感想と今後の課題


 

1.研究の動機

 昨年の選択理科における「地盤の液状化現象の起こりやすい条件」の研究やその様子を撮影したビデオを見て、私たちもやってみたいと思い、液状化を作り出せる「長ケ沢ダム」の現場に行った。そこには、昨年までの実験の跡は全然残っておらず、今年はどうなるか不安であったが、皆で地面に振動を加えるとすぐに地盤が液状化してきて、噴砂が始まってクレーターのようになった。

 このような噴砂を実際に見て、この現象がどのような条件で起こるのか調べてみたくなった。また、昨年の研究をふまえて、地盤の液状化の起きる条件をより詳しく調べてみようと思った。

図1 長ヶ沢ダムで見られる地盤の液状化現象による噴砂の様子

(人間の足と比べると、噴砂のあとは50p程度であることがわかる。)

 

2.長ケ沢ダムの調査の様子

 まずは液状化の実際の様子を調べるために、長ケ沢ダムに足を運び地盤の液状化の様子を観察した。

 1996年6月6日(木)の調査では、液状化が起きる様子を観察した。そこで、液状化はいったいどこから発生しているのだろうか、ということが疑問になったので掘ってみた。ところが掘っても水は流れて来るし土は崩れるし、どの部分で地盤の液状化が始まったのかよくわからなかった。そこで手で掘ってみることになった。噴砂でできたクレーターから手を入れていくと、液状化が起きているところが非常に柔らかくなっているので、手がどんどん入って行き、肩近くまで入った。しかも、別な場所から手を入れると、他の噴砂のクレーターから手を入れた人と地下で手をつなぐことが出きることが多かった(図3)。これは、ある条件のもとでは地下全体が液状化しているからと考えた。しかし、この観察では、地盤の液状化の起きる条件に迫るためには、もっと条件を限定しなくてはならないということしかわからなかった。

図2 噴砂によるクレーターから手を入れている様子

(この中は、非常に柔らかく、手がどんどん入っていく)

 

 

図3 噴砂によってできたクレーターに、2人で手を入れている様子

 

 1996年9月27日(金)に長ヶ沢ダムに調査に行った。この時、地盤の液状化で噴き出してくる泥水が、周辺の砂よりも黒いことに気づいた(図4)。よく観察すると、そこに含まれる粒は、液状化していない部分よりも小さそうである。

 

図4 噴砂でできた黒っぽい泥の吹き出したクレーター

 

3.長ケ沢ダムの調査のまとめ

 長ケ沢ダムの調査で、土の粒が小さい方が液状化しやすそうではないかと考えた。また、水分の量も関係しそうなので、1996年10月5日(土)に長ケ沢ダムでまたまた地盤の液状化の状態をつくり、液状化した部分とそうでない部分のサンプルをとってきて、その砂や泥に含まれる水の量と全体における水の量を測定した。その結果が表1である。

地盤の液状化ができた場合

全体の質量(g) 42 46 49 51 53 55 56 56 56 57 57 59 60
水の質量(g) 10 10
水の割合(%) 17 17 16 18 15 15 14 14 14 16 16 17 17

地盤の液状化が起きない場合

全体の質量(g) 33 37 38 41 41 42 42 48
水の質量(g)
水の割合(%) 14 14 14 13 15 14 14 13

表1 地盤の液状化が起きた場合と起きない場合の地盤に含む水の割合

 

 これを見ると、地盤に含む水の質量が14%を境にして液状化が起きやすくなったり起きにくかったりしているように見える。しかし、これは他の条件、例えば、振動の与え方、地盤に含まれる砂や泥の粒についての実験の条件をそろえていないために、おおまかな傾向しかわからない。

 それでも、サンプルとして持ってきたものを見ると、液状化した方は野外で見たように色が黒から灰色のものが多く、また、その粒も小さいものが多かったので、地盤に含む水の量と土の粒径と地盤の液状化の起こりやすさに関係があるのではないかということに注目してみようということになった。

4.地盤の液状化の起きる条件についての仮説

 仮説1.水分が多いほど液状化は起きやすい。

(埋立地など水分の多いところで地盤のの液状化も起きているし、昨年の 選択理科の実験でもそのような傾向がみられたから。)

 仮説2.地盤をつくる土の粒が小さいほどを液状化は起きやすい。

(長ケ沢ダムの観察から考えられたから。)

5.砂粒の分け方

 ふるいを使い砂の粒を分けた。粒は以下のような大きさに分けた。

   A 0.25mm未満

   B 0.25mm以上 0.5mm未満

   C 0.5 mm以上 1.0mm未満

   D 1.0 mm以上 2.0mm未満

   E 2.0 mm以上 4.0mm未満

   F 4.0 mm以上

6.液状化をつくり出す実験装置

 水と砂を入れ液状化を起こす装置は、昨年度も使った液状化1号である。そこにA〜Fのサンプルを一度にのせ、砂の揺れる幅を10cm、揺れる周期(1往復する時間)を1秒にし、各実験で30回往復させて液状化が起きるかを調べた。

7.実験方法

 A〜Fの砂をそれぞれ30cm3ずつフイルムケースにとり、液状化1号にのせた。そして水平方向に30回振動させては、液状化しているかどうか確かめた。液状化していないときは、さらに水を1cm3加え、同様の実験を繰り返した。

 液状化しているかどうかは、見た目でだけでなく、割箸で押してみて割箸がするする入って行くかどうかで、サンプル全体が液状化しているかを判断した。

8.実験結果

 実験結果は、表2から表5である。横軸は砂粒の直径、縦軸は水の量をあらわしている。表の中の「○」は液状化が起きたところ。「×」は液状化が起きていないところをあらわしている。

 

表2 砂粒の直径と水の量による液状化の起きる場合(1回目) (○は液状化が起きた。×は液状化が起きなかった。)

 

表3 砂粒の直径と水の量による液状化の起きる場合(2回目) (○は液状化が起きた。×は液状化が起きなかった。)

 

表4 砂粒の直径と水の量による液状化の起きる場合(3回目) (○は液状化が起きた。×は液状化が起きなかった。)

 

表5 砂粒の直径と水の量による液状化の起きる場合(4回目) (○は液状化が起きた。×は液状化が起きなかった。)

9.実験結果のまとめ

実験結果を表にまとめると表6のようになる。横軸は砂粒の直径、縦軸は水の量をあらわしている。表の中の「○」は液状化が起きたところ。「×」は液状化が起きていないところをあらわしているのは同じである。「△」は液状化が起きたり起きなかったりするところをあらわしている。

表6 砂粒の直径と水の量による液状化の起きる場合のまとめ

液状化の起きやすいところは、表6のように3領域に分けることができる。
◎ゾーンT・・・必ず液状化が起きる。
◎ゾーンU・・・液状化が起きる可能性がある。
◎ゾーンV・・・液状化が起きない。
Aのように粒がきわめて小さいときは、もっと液状化しやすいのかと思ったが、水が少ないうちは割箸で押しても固くなっていることがわかるほどであった。

10.考察

 C 砂の中に占める水の割合がある程度の量を越えると地盤の液状化の可能性が 大きくなる。砂粒がほぼ均質で砂の体積が30mm3 の場合、水の体積が10 cm3 がその境界である。これは、水の量がある程度を越えると、砂粒が振動 を受けて水の中に浮きやすくなるためと思われる。

 D 砂粒の直径が2mmを越えると、急に液状化しにくくなる。これは、砂粒が 大きくなると、質量の割には表面積があまり大きくならず水に浮きにくくなる ことと、砂粒同士の接触している面積が大きいため、粒の間に働く摩擦力が大 きくなるためと思われる。

11.研究の感想と今後の課題

 C 長ケ沢ダムに何回も行き観察することにより、液状化の原因の仮説を考える ことができてよかった。

 D 液状化は、水の条件と砂粒の大きさの条件に関しては、水がある量を越える と急激に起きやすくなったり、砂粒がある大きさより大きくなると急に起きに くくなったりするのは驚きだった。

 E 今回は砂粒をそろえたが、自然の中では色々な直径の砂粒が混じっているも のと思われる。今後は、砂粒が混じった状態の時に液状化の起きやすい条件が どう変化するのかを調べてみたい。

 

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