ポカラ(POKHARA)

もしカトマンズがネパールの文化の中心だとしたら、ポカラは冒険の中心である。穏やかな自然に囲まれた静かな盆地にあるこの魅力的な町、ポカラはネパールのトレッキングのメッカであり、最近は、川下りも盛んになってきた。フェワ(Phewa)湖の岸辺には、ホテルやレストランがたくさんあって、トレッキングを楽しむ人たちがバーやレストランに集まって、おすすめのゲストハウスや、ヒマラヤのふもとで見てきた景色について、おしゃべりに花を咲かせている。ポカラは第一級の観光地なのだ。

ポカラはまた他にはないユニークな美しい自然に満ちた所でもある。穏やかなフェワ湖、その向こうにそびえる魚の尾びれの形をしたマチャプチャレ(Machhapuchhre)(6,977 m)。湖面に映るマチャプチャレの姿は、平和なまた魔法にかけられたような気分を醸し出す。ポカラの標高はカトマンズより低いので、亜熱帯的な自然がある。従って、花々も見る事ができる。確かに、周囲には、豊かな緑の森があり、澄んだ水がほとばしる川があり、エメラルド色に染まった湖があり、そしてもちろん、世界に誇れるヒマラヤの峰々が間近にそびえ立っているのだ。

歴史的に言うと、この地域は、カトマンズで勢力を誇っていた、リッチャヴィ(Lichhavis)王朝とマッラ(Mallas)王朝の時代には、彼らの支配下にあった。しかし、彼らが内部抗争で勢力が衰えてくると、このポカラ盆地と周辺の地域には小さな王国が群立し、抗争を繰り返していた。この時代は、チョウビセ・ラジャ(Chaubise Rajya)といわれる。それは、「24の王国」という意味である。そのうちの一つ王国を建てたのが、クルマンダン・シャハ(Kulmandan Shah)であり、その子孫のドラビャ・シャハ(Drabya Shah)が、その後ネパールを統一したゴルカに王国を建てたのである。ちなみに、このゴルカが、伝説的ともいえるグルカ兵の生まれ故郷なのである。

また、ポカラはかつて活発に交易が行われていたインドとチベットの間を結ぶ交易路の重要な町でもあった。現在でも町の外れにロバの隊列がキャンプしているのを見る事ができる。車の行けないヒマラヤの山間地に物資を届けるために重要な役割を果たしているのである。民族的には、ポカラには、マーガルとグルン族が多い。彼らは勤勉な農民であり、また、勇敢な兵士として世界的に有名になったグルカ兵としても活躍してきた。また、もう一つポカラで主要なタカリー族は有能な商人として知られており、ビジネスの分野で活躍している。

アンナプルナ連峰 ポカラを訪れた誰もが間違いなく驚くのは、北側に広がるアンナプルナ連峰のパノラマであろう。目に入る限り、東から西まで広がるアンナプルナ連峰にはアンナプルナ第一峰から第四峰までとアンナプルナ・サウスの峰がある。その中で一番高いのはアンナプルナ1(8,091 m)であるけれど、最も目立つのは、マチャプチャレである。空中に浮かびあがるような魚の尾びれの形をしたピークは、おそらくこのような峰の原形ともいえるだろう。エヴェレスト航空では空からの眺望を楽しみたい人たちのために、西部ヒマラヤのマウンテン・フライトを運行している。おすすめである。

フェワ(Phewa)湖 ネパールで二番目に大きいフェワ湖は、ポカラの観光の中心といってよい。ポカラを輝かせている三つの湖の中でやはりフェワ胡が一番魅力にあふれている。景色を楽しむだけでなく、ボートをこいだり、ヨットに乗ったり、また湖の中の小島にある寺院に行って楽しむことができる。東側の湖岸の周辺はレイク・サイドあるいは地元の言葉でバイダム(Baidam)と呼ばれているが、観光客のメッカとなっていて、ホテルや、ゲストハウス、みやげ物店などがたくさんあり、観光客を集めている。


バラヒ(Barahi)寺院 バラヒ寺院は、ポカラで一番重要な旧跡である。フェワ湖の中に浮かぶ小島にある、この寺院は、二層のパゴダ形式で、シャクティ(Shakti)と呼ばれる女性的力の守護神であるアジマ(Ajima)の化身であるイノシシが祭られている。土曜日などにはオスの動物、鶏をアジマのために犠牲に捧げる参詣者が数多くこの寺院を訪れる。

セティ・ガンダキ(Seti Gandaki)川 ポカラにある自然の驚異の中で、セティ・ガンダキ川も見る者を驚かさずにはいない。ポカラの市街を縦断しているこの川は、固い岩盤を刻んで流れている。その流れの激しさもさる事ながら、一部は完全に地下に潜って流れている。また、ある所では幅が2メートルほどしかないが、その深さは20メートル以上にもなっている。マヘンドラ・プル市街にある橋からは、その荒々しい流れと、長年にわたって水が刻んだ鋭い谷を良く見ることができる。

デヴィの滝(Devi's Fall) 地元ではパタレ・チャンゴ(Patale Chhango、「地獄の滝」の意)と呼ばれている。この滝にはいくつかの別名があり、デヴィンの滝ともデヴィッドの滝ともいわれている。言い伝えによれば、トレッキングに来ていたデヴィ、あるいはデヴィッドという人がこのあたりで川に流されて、不思議にも地下を流れる川に行方不明になってしまったために、その名前が付けられたといわれている。この滝は、ポカラの空港から南西に2キロほど、シッダルタ・ハイウェイ(Siddhartha Highway)に面した所にある。

マヘンドラ(Mahendra)洞窟 ポカラの北に2時間ほど歩いた所にマヘンドラ・グファ(Mahendra Gupha)と呼ばれる鍾乳洞がある。地元では、コウモリの家とも呼ばれるほどコウモリがたくさん住みついている。また素晴らしい鍾乳石や石筍を見ることができる。灯かりが少ないので、懐中電灯を持っていった方がよい。

旧バザール ポカラのバザールではいろいろな民族の商人たちとその色鮮やかな暮らしぶりを見ることができる。寺院や遺跡はカトマンズでも見られるネワール族の建築にひけを取らない素晴らしいものがある。フェワ湖畔から約4キロの所にあるこのバザールは今でも食料品から衣料、化粧品、金などを売る店が軒を連ねておりにぎわっている。

また、このバザールにはポカラでも有名な寺院がある。ビンデャバシニ(Bindhyabasini)寺院と呼ばれるこの寺院は丘の上にあり、白いドーム上の構造と石畳の広い境内を誇っている。この寺院はシャクティの別な化身である女神バグワティ(Bhagwati)を祭っている。火曜日と土曜日には参詣客が集まり、賑わいを見せる。

博物館 バス停とマヘンドラ橋(Mahendra Pul)の間にあるポカラ博物館では、西ネパールの人々の歴史と生活がよく分かる展示を見ることができる。西ネパールに住むグルン、タカリー、タルなどの民族の文化、歴史に関する陳列がある。中でも特筆すべきは、近年発掘された8000年以上昔のムスタン(Mustang)の遺跡に関する展示であろう。開館は火曜日と休日以外の午前10時から午後5時までである。入場料:10ルピー(電話: 20413)

アンナプルナ地域博物館(自然史博物館)はアンナプルナ保護地域プロジェクト(Annapurna Conservation Area Project)によって運営されている博物館である。ここでは、アンナプルナ地域で見られる野生の動物、蝶、鳥、昆虫の標本や剥製が展示されている。場所は旧バザールの東側にあるプリトュヴィ・ナラヤン大学の中で、土曜日と休日以外の午前9時から午後5時まで開館している。入場無料。(電話:: 21102)

ポカラからのトレッキング ポカラからはたくさんのトレッキングのコースが設定されている。中でも有名なのは、アンナプルナの周回コースとジョムソン(Jomsom)のコースであろう。短期間のコースも数多くあるが、中でも有名なのはサランコット(Sarangkot (1592m))のコースである。ポカラの西側にあるこの丘の上には古いカスキ王国の砦があり、ヒマラヤ山脈西部地域を見渡すことのできる眺望を誇っている。それ以外には、カフンダラ(Kahundanda)、ノウダラ(Naudanda)、ガンドルン(Ghandrung)、ゴレパニ(Ghorepani)、ガルチョク(Ghalchok)などがヒマラヤの眺望のよい丘である。

ポカラへの行き方 ポカラはカトマンズの西方約200キロの所に位置している。カトマンズからポカラへ行く旅もまた、ネパールを知るための貴重な体験となるだろう。国内線の飛行機か陸路をバスやタクシーで行くことができる。飛行機で行けば、北に雪を頂いたヒマラヤの峰と、南に人々が暮らしている緑豊かなマハバーラタ山地を見ることができるし、バスで行けば、トリスリ川に沿って進む道沿いに、山間農村地域に暮らす人々の生活を身近に経験することができる。ポカラ、カトマンズ間には毎日バスと飛行機が運行している。

 

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