校内研究(1998)

 


1.研究の概要

2.各教科の研究実践計画

3.研究の成果と課題


 

T研究の概要

 

1.研究主題 

    めあてを持ち、意欲的に活動できる生徒の育成

         −個を生かすためのコミュニケ−ションを通して−

2.主題設定の理由

 (1) 社会情勢の変化から

 まもなく21世紀を迎えようとしている今日、社会情勢は益々複雑かつ多様化している。コンピュ−タは広く生活の中で使われるようになり、様々な情報が飛びかっている。交通量の増大、核家族・少子化等に伴い、子供たちの様子も大きく変化している。社会を騒がせる事件に関わる子供たちさえおり、驚かされる。経済的には金融をはじめとして多額の負債問題を抱えており、国の早急な対応が期待されている。また、国際化がより大きく叫ばれるようになってきており、国内においても様々な文化を持つ外国人が多く居住するようになってきた。

 これからの社会を背負っていく子供たちに求められものは大きい。学習指導要領においては、「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成」を掲げている。それには、よりよく生きていくための自らの積極的な意思を育む必要性がある。同時に「基礎的・基本的な内容の指導の徹底と個性を生かす教育の充実」に努めるために、一人ひとりを大切にした教育をより考えねばならない。また、社会で生きていくには、人とのつながりを大切にすることも求められる。

 (2) 学校教育目標から

 本校の教育目標の一つに、「知識と技能を求め、自ら学びとる生徒」が掲げられている。すなわち学習する意思が強く、自分自身から学ぼうとする姿勢を持つことを目指している。学習とはもともとそういうものであろうが、ややもすると無目的で惰性的な形に流されている場合が多い。単なる受け身的な学習ではなく、意欲的に自分から求める学習は、生涯にわたって有効なよりよく生きていく力の元となるものである。その礎を築くためにも、大きな目標として、その実現に努力を続けなければならない。

 (3) 生徒の実態から

 本校の生徒は素直で豊かな感受性とひたむきな姿勢を持っている。学習や諸活動に対する興味・関心は比較的高く、与えられた課題は真面目に取り組もうとする。すなわち学習に向かう土台はできている。しかし、自ら課題をつかんだり、進んで活動するまでには至っていない。

 本校は全校生徒47名と小規模校であり、自然に囲まれた山村地域である。将来を考えた時、新しい人間関係や環境の中にでていくことが避けられない。小さい頃より慣れ親しんだ社会から、全く異なる社会にでていった時は、大きな人生の転機でもあろう。そんな中でも自分らしさを忘れず、順応できるようになってほしいものである。

 また生徒は真面目で優しい気持ちを持っており、いわゆるいい子供たちである。 しかし、相手に遠慮しすぎる、気弱な面をあわせ持つ。そのため自分で思っていることも言えず、抑えてしまう傾向がある。小規模校であるがゆえに、同じ人間関係で毎日を過ごさなければならず、必然的に自分を抑えなければならない面もある。以上の点から生徒の実態を考えた時、小規模校の特性を生かした指導として、個々を大切に個を生かした指導を中心に据え、少ない人数ながらもコミュニケ−ションを大切にし、自己存在感や共感的人間関係を培おうと考えた。ひたむきな生徒たちが、どんな環境や人間関係の中でもめあてを持ち、意欲的な活動ができるようになり、生きる力が育まれれば最高である。

 以上1〜3から、研究主題を設定した。

3.研究の仮説

 生徒同士の会話・討論・教え合いなどのコミュニケ−ションを大切にし、互いの考えの共通点や違いを認識しながら、自分の考えを持ち、互いに認め合うことで自己存在感を得、意欲的に活動するであろう。

4.サブテ−マについて

 (1) 本校では、研究主題の達成のためにサブテ−マを設け、研究の中心としてとらえている。サブテ−マで掲げた内容は次のようになる。

 @ 「個を生かす」という点を次のようにとらえる。学習内容を身に付けさせることは私たちの大きな仕事であり、生徒一人ひとりに内容がわかるように様々な工夫を行っている。その前提に立ちながら、さらに生徒一人ひとりが充実感や満足感を得られる授業を目指していく。生徒指導の三機能を取り入れ、生徒一人ひとりがいきいきと活動できることが、個を生かすということではないかと考えた。

  ア 授業内容がわかり、達成感を持つことができる。

  イ 活躍することができ、自己存在感を持つことができる。

  ウ 個の良さが発揮され、個性が伸ばされる。

 A 本校では次のようにコミュニケ−ションを考えた。どんなコミュニケ−ションがいいかという方法論の研究ではなく、個を生かすために、他とのコミュニケ−ションを行っていくことが大切という考えを持った。そのために、コミュニケ−ションを図れる人間関係を重要視し、何でも言い合える雰囲気づくりをはじめとして、あたたかい人間関係を目指した。また、そういった中で、互いの意見を言い合い、聞き合いながら自分の考えが、より一層高まっていくことを目指したものである。

  ア 互いの良さを認め合うなどの生徒指導の三機能を大切にし、あたたかい相互の人間関係づくりを、コミュニケ−ションがはかれる土壌とする。

  イ 何でも意見を言い合い、互いの関わりの中で、練り合い、互いに高め合っていくことをねらっている。  

5.研究の内容  

 @ 生徒同士の関わり方          

  ア グル−プ学習・ペア学習・教え合い学習などの形態を工夫する。

  イ 討論・意見発表などの方法を通して、練り合いを図る。

  ウ 生徒指導の三機能を充分に生かす。

 A 教師の関わり方

  ア 円滑なコミュニケ−ションの支援を図る。

  イ はげまし・ほめ方などによる工夫を通し、学習意欲の向上を図る。

  ウ 教師と生徒の信頼関係を築き、互いのコミュニケ−ションを目指す。

 6.めざす生徒像

 @ 人の話をよく聞き、自分の考えを持つことのできる生徒

 A 他の人と協力し、自分を表現できる生徒

 B 学習意欲を持ち、自ら活動できる生徒

 

 U 各教科の研究実践計画

<国語科>

1.研究主題との関連

 国語は日常使っている言葉について学習する教科であるので、読書経験や生活経験の差からも、生徒間の個人差は大変大きい教科である。だから、どうしても教師の説明が多くなるし、そうでないと進めない面もある。そのため、生徒にとっては受け身の授業になってしまうし、家庭学習の習慣もつかない状況である。本校の研究主題の中心は個を生かすことなので、生徒個人に、積極的に学習に取り組ませ、かつ社会生活にも役立つ力を付けさせるためにも、課題を持って授業に臨み、お互いに考えを深めることができるように、授業を改善していきたい。

2.研究内容

 (1) 生徒同士の関わり方

 @ 自分自身の意見をきちんと持つと共に、他人の意見も聞くことのできる学習規律を身に付けさせる。

 A 他人と協力して学習でき、自分の考えをより深めることのできる活動の場を取り入れる。

 (2) 教師の関わり方

 @ いろいろな集団学習の場を取り入れ、自分の考えを確認させると共に他人の考えを取り入れ、より深い考えに至らせる過程を工夫する。

 A 一時間ごとの目標をはっきり示した授業を展開する。

 B 生徒の意欲に結びつくような課題を持たせ、自分自身で確認できる評価の在り方を工夫する。                                 

<社会科>

1.研究主題との関連                                

  本校の研究主題の中心は、個を生かすである。小規模校の特性を生かして、生徒一人ひとりに達成感や充実感を与えることを目標としている。それは、課題に対して社会的な思考ができ、自分なりの考えを持てた時にはじめて得られるものではないかと考えた。同時に自分の考えに賛同する者や反対する者などがおり、自分の考えが認められる形の時に、その満足感はより大きくなると思われる。それが次の行動にもつながると考えた。そこで自分の考えを持つ、生徒同士の関わり、それへの教師の関わりを中心に研究をすすめ、個が生かされるよう工夫したい。

2.研究内容

 (1) 自分の考えを持たせる方法

 @ 興味・関心を持たせる課題提示や資料の選定を行う。

 A 継続して学習プリントを使用し、書くことの表現活動に慣れさせ、自分の考えを整理させる。

 B 視聴覚機器の有効な活用を行い、意欲化を図る。

 (2) 生徒同士の関わり方

 @ 自由に意見を言える雰囲気づくりを行う。

 A 他の人の考えを参考にできるよう相談する時間を設ける。

 B グル−プ活動を通して、互いの考えを発展させる。

 C 他の人の意見について、自分の考えを述べさせる場と時間を設ける。

 (3) 教師の関わり方

 @ 生徒の良さを伸ばすためのほめ方を考える。

 A 学習内容の理解の支援を行う。

 B 有効なコミュニケ−ション活動のための指示・発問を考える。

 C グル−プ活動などの時の教師の支援について考える。

<数学科>

1.研究主題との関連

 数学は他の教科に比べて暗記することが少なく、自分で納得・理解することが重要な教科である。その点から考えれば、わからないことを教師や他の生徒へ質問することがとても大事な教科である。したがって、コミュニケ−ションが成立しやすい教科である。そこで教科の特性を生かし、教え合い学習を多く取り入れていきたい。反面、他の教科に比べると、多様な考えが持てるような課題設定が難しく、それぞれの考えを出し合い議論するような場面設定が困難な教科でもあるが、課題を工夫して、多様な考えが出るような授業も模索してみたい。

2.研究内容

 (1) 生徒同士の関わり方

 @ ペアやグル−プで答え合わせをさせることにより、わからないところの教え合いをさせる。

 A 全体での発表の前にグル−プでの発表を行わせることにより、自分の考えを確かめさせる。

 B オ−プンエンド的な課題について、グル−プや全体で話し合わせることにより、他の人の考えの良さを学びとらせる。

 (2) 教師の関わり方

 @ 全員が答えられる発問をし、全員に答えさせることにより意欲を喚起させる。

 A 生徒の多様な考えを多く取り上げ、良いところを誉めるようにする。

 B グル−プ学習の時、巡視しながら適宜援助をしていく。

<理科>

1.研究主題との関連

 生徒に興味・関心を持たせ、学習意欲をかきたてるためには、自分の力で課題を解決させ、成功感や成就感を味わせるとともに、学ぶ喜びを体得させることが大切である。その際、一人の努力だけでなく、少ないながらも集団でコミュニケ−ションを持ちながら取り組むことにより、互いの良さを学ぶことができたり、自己存在感を認識できる。その結果として、個の力を伸ばせるものと考える。情報のあふれている現代では、必要と思われる情報を自ら収集し、その中から本当に必要なことや課題を見いだせる能力が大切になってきている。そしてその結果得た知識が独善的にならないためにも、生徒相互のコミュニケ−ションを充実させていきたい。

2.研究内容

 (1) 生徒同士の関わり方

 @ 導入の段階で、互いに疑問点を出し合ったり、予想したり仮説を立てる。

 A 展開の段階で、他の良い方法を学びながら、実験や観察を協力する。

 B まとめの段階で、自分の考えを他に伝えたり、他の意見を聞き参考にしながら、課題を解決したり新たな課題をつかむ。

 (2) 教師の関わり方

 @ 生徒指導の三機能を授業でも生かし、お互いに良さを伸ばそうとする雰囲気をつくる。

 A 課題が明確で、つかみやすい授業をつくる。

 B ペアやグル−プの組み合わせを、お互いに力が出せるように考える。

 C 発展的な課題を単元に盛り込み、興味・関心を広げられるように工夫する。

<音楽科>

1.研究主題との関連

 音楽の授業は、教科の特質上、表現活動の多くがグル−プやパ−ト、クラスといった何らかの集団を基盤にして展開される。そこで音楽科では、特に題材の持つ特性やねらいに合わせた集団活動時のコミュニケ−ションづくりに重点を置いた。人の感性が多様であるように音楽の可能性もまた多様である。生徒同士のコミュニケ−ションが活発になれば、音楽が深まり授業は生き生きとしたものになる。また、そこでお互いの考え・感性における共通点や相違点を改めて認識し、それを認め合うことができれば、それは自己存在感や充実感の獲得へとつながり、個が生き、意欲的に活動する生徒を育てられるのではないかと考えたのである。

2.研究内容

 (1) 生徒同士の関わり方

 @ 生徒同士の意思の疎通が図られ、生徒の様々な考えが活動の中に生かされるよう、リ−ダ−を中心に生徒主体で進める練習や活動の場を設ける。

 A 互いの良さを認め合ったり課題を見付け合ったりできるよう、練習や活動の成果を発表し合い話し合う活動の場を設ける。

 B 他の生徒の持つ多様な感受の仕方に気づくとともに、それらをもとに、自らも想像豊かにイメ−ジを膨らませられるような活動の場を設定する。

 C 仲間の作品の良さを認め生かすために、自分の作品を調和させながらつないでいく創作リレ−活動の場を設ける。

 (2) 教師の関わり方

 @ 生徒が主体となった練習や活動がスム−ズに行われるよう、課題の提示を工夫する。

 A お互いが力を出し合えるよう、リ−ダ−やグル−プの組み合わせを工夫する。

 B 生徒の多様な考えが練習や活動の場に生かされ、生徒が自信を深められるよう、支援のあり方を工夫する。

 C お互いの感性を認め合い、参考になるところを取り入れようとする雰囲気のある発表や話し合い活動になるよう、誉め方や取り上げ方を工夫する。

 D 個々の生徒がどんなリズムやメロディを描いているのかをつかみ、それを楽譜に表わして上手に伝えられるよう援助する。  

<技術・家庭科>

1.研究主題との関連

 技術・家庭科は、体験を通して学習する教科であり、道具や機器を使って、作業する場面が多い。基本的には、その作業は一人ですすめるものであり、人間対道具・機器という関係になりやすい。機械や道具だけとの関わりでは、自分の間違いに気づかなかったり、他の人の良さから自分自身を高めることがしにくい。そこでグル−プなどの意見を出し合わせたり、試行錯誤させる場面を多く設け、人間対人間という関係をつくり、練り合いできるようにさせたい。そうすることで、生活を工夫し、創造することができるようになり家庭生活・社会生活の中で、めあてを持ち、意欲的に活動できることにつながっていくと考える。

2.研究内容

 (1) 生徒同士の関わり方

 @ 他の人の操作や作品を見て、良いところを手本にさせる。

 A グル−プ内で教え合いさせたり、スモ−ルティ−チャ−を設け、わからない時などに質問させる。

 B 課題解決や作品制作の過程で、他の人の意見と自分の考えを比較し、自分の考えをまとめさせる。

 C 共通の課題に対して、試行錯誤させながら、練り合いさせ、より質の高い作品に仕上げさせる。

 D 教師や友だちから教えられたことを、他の人に教えようとする態度を身につけさせる。

 (2) 教師の関わり方

 @ 良い作品や、正しい操作の方法を紹介し、みんなに見やすいようにする。

 A 試行錯誤できるような、課題を設定したり、指示・発問したりする。

 B 制作の過程では、危険な場面や、大きな失敗につながる場合を除き、なるべく教師主導で教える場面を少なくする。

 C わからない生徒がいたら、スモ−ルティ−チャ−に指導するよう指示する。    

<英語科>

1.研究主題との関連

 英語の学習では、英語を通してわからなかったことがわかるようになったり、相手の思いを理解し自分の考えを伝えたりした時に、生徒は喜びを感じ、さらに学習を深めたり、次の課題を求めて解決しようとする意欲が湧いてくるものだと思う。「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能をバランスよく伸ばしていくことが、コミュニケ−ション能力を高め、英語の学習意欲や学力の向上につながると考える。尚、一斉授業の中でも個に応じた学習を工夫し、一人ひとりの力を伸ばしていきたい。 

2.研究内容

 (1) 生徒同士の関わり方

 @ 自由に意見を言い合い、高め合える雰囲気づくりを行う。

 A 身近なことがらや自分の考えについて、英語で表現する場を多く設定する。

 B コミュニケ−ション活動(インタビュ−、ロ−ルプレイ、ゲ−ムなど)を多く取り入れる。

 C 個の活動の場、ペア・グル−プ活動の場、全体の活動の場をそれぞれ効果的に設定する。

 (2) 教師の関わり方

 @ 学級担任との連携や学習形態の工夫により、コミュニケ−ション活動を行いやすい雰囲気を作る。

 A めあてを明確にし、わかりやすい授業を行う。

 B 授業の中でできるだけ多く英語を使用したり、掲示物を工夫したりすることによって、英語学習の雰囲気を高める。

 C 生徒が自信を持てるよう、適切な支援、指導を行う。              

 

V 研究の成果と課題

 本校では、「めあてを持ち、意欲的に活動できる生徒の育成」を研究主題にすえ、個を生かすことを中心に研究をすすめてきた。そして、そのためにコミュニケ−ションを通して個が生かされることを探ってみた。それぞれ一人ひとりの生徒が、いきいきと意欲的に取り組むことは、すべての教師・親の願いでもある。個が生かされるというのは、そういった状態になった時に違いない。それは、個別的な意味の個ではなく、個性あふれる一人の人間としての姿であるに違いない。そして、学校という集団生活の場の中で、個を生かすのには、コミュニケ−ションが大切なのではないかと考えたのである。研究自体は、方法論的なものではないので、成果としての多大なものがあるわけではない。そしてまだまだ研究の途中でもある。今までの研究を振り返り、今後につなげていければと考えているところである。そして、研究の成果の一番は、目の前の生徒たちの様子であるということを忘れず精進していきたい。

1.研究の成果

 (1) 個を生かすという考え方が、私たち教師に深く浸透し、今まで以上に生徒一人ひとりに目を向けるようになった。そのため諸会議ではもちろんのこと、日常的に生徒の良さや変化について、話題になり、情報交換がよりスム−ズにおこなわれるようになった。

 (2) 本校の研究は各教科の特性を大事にすすめられ、研究のための研究にならないよう心がけた。そのため日常の授業において、実践がはかられ、研究が深まった。生徒自身は、「させられている」から「自分たちの力でやっている」という意識の変化がみられ、個々の意欲が高まった。

 (3) 生徒の意欲を図るために大切と考えたものが、教師のほめるという行為である。教師自身が生徒の良さに目を向け、はげまし、ささえることの一つに、ほめ方が重要ではないかと考えた。それに、より目を向けることで、生徒の良さに今まで以上に気づくようになり、生徒とのコミュニケ−ションが円滑に図れるようになった。いわゆる教師の愛語は、教育において重要であることを再認識したところである。

 (4) 小規模校であるがゆえに、より教師の役割が大きい。そんな中、生徒とのコミュニケ−ションが円滑に行われ、教師自身が生徒の良さを学ぶ姿勢が構築され、生徒と共に活動し、互いに充実感を味わうことができた。

 (5) 研究は学習指導についてではあるが、諸活動においても個を生かそうとする動きが強まり、それぞれの生徒たちが活躍する場面が増えた。また、生徒同士のコミュニケ−ションが図られ、学級はもとより、学年を越えて、何でも言い合える雰囲気が高まってきた。

 (6) 各教科においては、次のような成果がある。

 @国語科では、難語句の意味調べを、始業前に調べてきただけ個人にいくらでも書かせる、プリント類の誤りを再度訂正して提示する際、他の生徒と教え合いをさせるなど試みたら、かなり意見交換がスム−ズにできるようになった。

 A社会科では、学習プリントを効果的に使い、自分の考えを書くことが定着してきており、それを使って教え合いをすることで、以前以上に自分の考えを活発に発表するようになった。そのため発表に対しての意見交換までできるようになってきている。

 B数学科では、授業の始めに全員が答えられる発問を行い、成就感を与え、ペアやグル−プでの教え合いを多用することにより、生徒が意欲的に取り組むようになってきている。

 C理科では、資料や実習の結果をまとめる際に話し合う時間を充分にとり、グル−プで話し合った内容を全体に確認していくことで、一人ひとりの生徒の考えを大事にしたり、生徒相互のコミュニケ−ションによって課題がまとめられるようになってきた。

 D音楽科では、週に1度全校音楽として、全校生徒が一緒に音楽を行っており、他学年との交流が図られている。学年を気にせずに互いのコミュニケ−ションが図られ、心を一つにして合唱できたという充実感が生まれ、意欲的になってきている。

 E技術科では、制作活動などで、いろいろな生徒が教える側・手本となる側となり、友だちの良さを認める雰囲気ができ、自分自身で試行錯誤しながらも解決しようとする姿勢ができてきている。

 F英語科では、コミュニケ−ション活動に対して、生徒が意欲的であり、英語の表現を用いての意思疎通ができた時は、本当に嬉しそうに活動し、次の活動を楽しみにするようになってきている。

2.研究の課題

 (1) コミュニケ−ションにより個が生かされたのかどうかは、教師による変容のとらえ方や生徒による自己評価にたよっており、評価項目の内容もさることながら、他の評価活動に対しても今後の研究の必要がある。

 (2) 授業の中でのいきいきとした活動と、テストによる結果との差がある生徒がおり、基礎学力の定着という点において、研究がまだまだの感が強い。教え合い学習により、生徒同士が聞き合ったりすることは、今まで以上に見かけるようになったのだが、ドリル学習の効果的な使い方など様々な点で考えねばならない。

 (3) 意見交換は活発になってきたものの、対立した意見については、互いが納得いくまでの話し合いが足りず、どちらかが譲る形で決着することが多い。まだまだ本音まで深まったコミュニケ−ションはとられていないようである。

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