学校安全研究
1 研究主題設定の理由
様々な禁止事項をつくり、違反者への罰則規定を後ろ楯に事故やケガの防止を図るのでは安全意識は育たない。研究成果を日常の学校生活に根づかせ、更には生涯にわたって自己の安全に留意しようとする意識にまで高めるには、「事故やケガを防止するために学校がいかに管理するか」から「生徒が身の安全を維持できる能力をいかに身につけるか」へと発想を転換させ、それらが生徒の主体的な姿勢で行われることが大切であると考え、本主題を設定した。また、地域の特性や本校の現状を踏まえ、本研究は「生活安全」「交通安全」「災害安全」の三領域にわたる研究推進を図りながらも、特にスポーツによるケガや事故の防止に力を入れることとし、サブテーマに掲げた。
2 研究の方針
(1)本研究は交通安全,災害安全,生活安全の三領域にわたり、学校安全全体計画にしたがって実践を深めながらも、特にサブテーマの研究推進を図る。
(2)「学校がいかに管理するか」から「生徒がいかに自己管理できるようになるか」へと発想を転換する。
(3)サブテーマに関わる取り組みの一環として、講習会を計画的に組み、専門家の指導を受ける。
(4)“生涯にわたって”の観点から、健康で安全にスポーツを楽むために役立つ実践になるよう努める。
(5)生徒・地域・家庭への広報活動の充実を図る。
3 研究の仮説
(1)体験学習を大切にし、種々の実践を生徒が主体的な立場で考え・行動できる方向へと指導・援助することで、「生徒をいかに安全に管理するか」から「生徒がいかに自己管理できるようになるか」への転換が図られ、テーマに迫れるであろう。
(2)スポーツ時の事故やケガの防止法を、専門家を通して教師と生徒が共に学び合う機会を設け、その後、それを学校生活に生かして高まり合っていくことができれば、ケガも減少するであろう。
(3)家庭や地域(スポーツ少年団員やその指導者,スポーツクラブ員やその指導者,地区の体育推進委員,市内小・中学校の指導者)とも連携を図りながら推進していくことで、生涯にわたって健康で安全にスポーツを楽しむ土壌ができるであろう。
(4)掲示活動や広報紙の発行に力を入れることで、生徒や地域・家庭の安全意識が高揚するであろう。
男子全員がバレーボール部,女子全員がバスケットボール部に所属しており、事故やケガの多くはその活動時に起きている。また“健康で安全にスポーツを楽しむ”うえで鉄欠乏性貧血も大きな障害となっていることから、下記の考え方に沿って実践を進め、その改善を図ることにした。内容と反省は次の通りである。
@専門家の指導をもとに、教師・生徒共々が学び合い、それを学校生活に結びつけて高まっていく。
A地域や家庭と結びついた実践になるよう努め、成果が生涯のスポーツ活動にも役立つようにする。
B体験学習や主体的な活動を大切にし、生徒が自己管理できる能力を高める。
(1)<第1回>『ストレッチ体操』講習会
専門家を通じて運動競技それぞれの特性に応じたストレッチのあり方を学び、その後の部活動や体育の授業に生かしてケガの防止に役立てる。
<講習内容>
@ウォーミングアップやクールダウン時の効果的なストレッチの行い方
A運動種目の特性を生かした効果的なストレッチの組み合わせ方
(2)<第2回>『スポーツ傷害予防』講習会
ケガの原因,メカニズム,治癒法を医学的立場かとらえ、研究実践に役立てる。
<講習内容>
@発育期のスポーツやトレーニングの問題点
A発育期に起き易いケガや障害とその要因
B応急処置(RICE)療法
C指や足の捻挫予防のテーピング法
(3)<第3回>『バスケットボール』講習会
女子全員が所属している部活動競技について、安全な活動の仕方をスポーツ指導者から実践を通して具体的に学び、その後の活動に生かす。
<講習内容>
@起こし易いケガとその防止策
Aケガを起こした時の応急処置の仕方
Bテーピングの仕方(ケガの防止,痛みの軽減や悪化防止,再発防止)
C安全で技術的・精神的に効果の上がる練習法
(4)<第4回>『中学生の望ましい食生活』講習会
鉄欠乏性貧血によるスポーツの禁止や著しい制限がサブテーマに掲げた目指す生徒像の障害となっているため、食生活を見直しその改善を図る。
<講習内容>
@最近の子供達の特徴と食生活との関連
A中学時代の食生活のあり方が大切な理由
B食事の改善による鉄欠乏性貧血と肥満の対策
C中学生に薦めたい間食と食事のメニュー
(5)<第5回>『バレーボール』講習会
男子全員が所属している部活動競技について、安全な活動の仕方をスポーツ指導者から実践を通して具体的に学び、その後の活動に生かす。
<講習内容>
@安全にプレーするための基本動作のとり方
Aテーピングの仕方(ケガの防止,痛みの軽減や悪化防止,再発防止)
B安全で技術的・精神的に効果の上がる練習法
(6)月別身長体重測定
インターバルを活用し、生徒同士が互いに測定し合う生徒の主体的活動の1つ。心身のストレスが体重の不規則に結びつく場合があることに着目し、それを心身のストレスチェック(ストレスが溜るとケガをし易い)に利用してケガの未然防止に役立てる。
(7)月別柔軟度チェック
疲労の蓄積はケガや事故の引き金になる。疲労が溜ると体の柔軟性も鈍る点に着目し、個々の生徒の柔軟度を定期的に測る事でケガや事故の未然防止に役立てる。これも、生徒が相互にチェックする主体的な取り組みを通して自己管理ができるよう努めた。
(8)ケガの原因と症状,対処の仕方コーナー
起こし易いケガの原因,症状,対処法が記載されたカードを8種類設置。体の不調を感じた時、生徒が自ら学び取り、実践に移すことができるようにした。
(9)『診断結果連絡票』の考案と活用
「ケガの早期回復のためにどんな運動制限が必要なのか」を“医者が伝えたい”あるいは“学校が知りたい”といった相互の願いを橋渡しするためのものである。連絡票は無料で書いて頂けるようにした。
(10)個人ノート『ひまわり』の活用
生徒と養護教諭の交換ノートである。生徒は体調,ケガの状況,悩みを書いて毎朝提出し、養護教諭は生徒全員に赤ペンを入れ放課後までに返す様にした。
(11)『すこやか広場』の設置
ケガや事故の防止と安全意識の高揚を願い、安全に関する情報を専門に発信する場所を設置。『すこやか広場』と名付けて積極的な掲示活動を行った。
(12)学校安全通信『Safety Life』の発行
安全意識を高め、家庭への啓蒙をも図るために発行。同時に学校で取り組んでいる研究の様子も紹介した。
全校生徒に追跡調査を実施。そこで得た各実践の反省をもとに仮説を検証し、研究の成果と課題を探った。
◆仮説@について
・実践を“生徒が主体的な立場で考え行動できる方向に指導・援助する場”ととらえ、体験活動を重視しながら推進してきた事で、“ケガや事故の防止と対応”に対する生徒の自発的態度が次第に育ってきており、研究テーマの『安全について正しく判断し主体的に活動できる生徒』の育成に効果があった。こうして芽ばえた主体的な姿勢が、自己を管理する能力へと結びつき、今後更に高められるよう指導・援助を続けたい。
◆仮説Aについて
・講習会を通して、教師と生徒の双方が“ケガの防止や正しい対処の仕方”を数多く学ぶ事ができ、安全意識が高まった。また、そこで得た知識や技能が、学校生活に根ざした新たな実践に結びつく事も多く、研究の大きな成果といえる。
・外科的疾患により保健室を利用する生徒が年々減少しており、平成9年度は平成7年度(研究を始める前の年)の42%にまで減少。これら一連の取り組みがスポーツによる事故やケガの防止に極めて有効であったことが確かめられた。
◆仮説Bについて
・各講習会を、親や市内の指導者(小・中学校の体育教師,部活動顧問,養護教諭)や地域(スポーツ少年団員とその指導者,スポーツクラブ員とその指導者,体育推進委員,体育指導員)にも多数参加して頂きながら共通認識のもとで推進できたのは、“生涯にわたって”というサブテーマの趣旨からも、大変有意義であった。
・この研究を通して培われてきたこれらの絆を、今後も大切にし、更に生かしていきたい。
◆仮説Cについて
・学校安全の取り組みを家庭に伝えるだけでなく、生徒自身が安全について考え直したり、取り組みを振り返ったりするのにも役立った。こうしたことから、広報活動は生徒や地域,家庭における安全意識の高揚に効果があったと言える。
交通安全
@登下校指導
A自転車点検
B『私達の通学路マップ』作成
C交通安全標語募集
D交通安全人形『夜ピカリ君』製作
E街路灯設置運動
F交通安全教室
G交通安全看板製作
災害安全
@避難訓練
A消火体験学習
B地震体験学習
C心肺蘇生法体験学習
D救急処置法体験学習
EVTRによる学習
F校舎の実態調査
G安全設備のチェック
生活安全
@生徒会主催『カルタ大会』
A集会における安全指導
B授業における安全指導
C環境の安全整備活動(グランド整備,自転車置場の修繕,校舎内外の修繕,プールの清掃整備, 積雪時の道路確保)
D安全管理(安全点検,プール管理)