講義の日 /2003.2.9


イスラムの国では日曜日も平日です。金曜日が日曜日にあたるわけなので、感覚的には火曜日という感じでしょうか。
今日も朝からJECC(今回のカウンターパート)のオフィスにはいろんな人が出入りしています。

さて、今日は講義の日です。
桑山が講師で、生徒さんは、このジェニンで働くカウンセラー、ソーシャルワーカーの人たちです。5人も来ればいいほうかも・・・と思っていましたが、実に20人近い人が集まりました。みんな関心が高いようです。
さて、今日の課題はNon-Verbal Communication、つまり、非言語的交流です。これはいうなれば言葉を介さない形で交流することですが、その主なものに描画があります。絵を通して交流し、相手の精神状況を読み取り、ケアにつなげていく方法です。




セミナーの様子 

今日はバウムテストとHTP(家、樹、人)テストについて実際に描いてもらいながらやってみました。バウムテストは「1本の実のなる樹」を描いてもらうものですが、簡単に描ける一方で、結構いろんなことが読み取れます。
 
たとえば見は夢や希望の数、根は心の安定感、幹は自信や自尊心、全体の占有面積は心のエネルギーを指すなどといわれています。もちろんその1枚から占いのように読み取るのではなく、あくまで心にアプローチする「ヒント」として使います。たとえば、左の上のほうに、実に小さく申し訳なさそうに描かれた樹は、その人の心が縮こまって、自信を失い、夢や希望をもてないでいる象徴かもしれません。そん
なときは、
「今回はずいぶん小さな樹になったけど、何か思いや何でいることがある?」
とか、
「将来なりたい職業ってあるの?」
などと、子どもの心に緩やかにアプローチしていくことに有効です。

一方HTPテストは、バウムテストがその人自身に関する情報を提供してくれるのと対照的に、その人の中における「関係性」に焦点を当てます。出てくる項目は、家、樹、人の3つだけであり、その3つがお互いどのように関連し合っているかによって情報を得ます。
 
たとえば、樹が描かれ、その下に人が座ってくつろいでいる構図が出てきたとすれば、それは、ひとときがとてもいい関係にあり、その人には安住の場所があって精神的にはいい状態にあることが読み取れます。また一方で、家に窓やドアが描かれず、人がそれこそ画面の奥、遠方に小さく人が描かれていたりすると、「家の中に何か障害が?」あるいは「家に帰りたくない?」「人が怖い?」などといった傾向が感じられ、それを次のカウンセリングや観察のポイントにできるわけです。

さて、参加者は実に熱心かつ元気な人々です。積極的に質問してくるし、その内容も適当です。そして何より明るい雰囲気がとてもよかったです。

こうして「心の問題」はちゃんとパレスチナの中では認知されており、それにかかわる人たちが専門性を求めて勉強しています。実に頼もしいいことです。
 最後に、
「次は7月に来るけど、またこういったセミナーやる?」
「やる〜!!」
「次はどんなことがいい?」
「もっと絵のこと、それからトラウマ、えっとそれからほかの地域の情報と・・・」
 大変求められている状況です。

この熱意のある人々ともに、この心の問題について今後も取り組んでいけそうです。
それにしても、その必要性が皮肉なことに「紛争」という悲しい出来事から来ていることが、とても残念でした。

 ジェニンの活動もあと1日。
 気張っていかねば・・・