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ファーティマ

 
 小柄で、目が大きくて、シャイな笑顔がなんとも可愛いファーティマ、13歳。青少年活動を始めるに当って、自ら家庭訪問した家の1つがファーティマの家だったから、彼女の家族の事情はそれなりに知っていた。母ワファとファーティマ、ワラッ(12才)、ドゥハ(10才)、ルグダ(8才)、シャムス(2才)の5人姉妹。


  家族

家の中に入ると、まず気づくことはすっからかんな広間。唯一の家具は底が抜けていてほとんど使いものにならないソファ1つ、部屋の奥には冷蔵庫が寂しそうに立っているだけ。広間の天井は凸凹なトタン板で、イスラエル軍のミサイル破片が飛んで来て出来た穴や、板がもろくなって出来たひび割れなどで、見上げるとところどころ青空が見えてしまう。窓なんて勿論、壁に開いている、ガラスもなんの仕切りもないただの空間。そして、家族が全員寝泊りしている部屋の天井はコンクリートだがもろくて、屋上に設置されている水タンクから水が天井に染み込んでいて部分的に黒くなっている。

   家の中



父イブラヒームは健在だけど、ファーティマたちとは一緒に暮していなかった。ガザではそれほど珍しい話ではないが、ワファとは娘にしか恵まれなかったことを理由に、4年ほど前に2番目の奥さんを設けていた。ファーティマがまだ9歳のことだった。父はその2番目の奥さんとの新居を決め、ファーティマたちの家から出て行った。その後、父親は2週間に1回ほど、その期間の食料として市場から買って来た野菜などを家に運んでくれるくらいで、その他はたまに渡されるびびたる資金でファーティマの家族はなんとか切り盛りしながら生活していっていた。ファーティマは長女、下の子たちの面倒をよく見ていてとても可愛がっていた。

 そういうファーティマは毎回欠かせなくワークショップに参加してくれていた。小柄で目が大きくて、とにかく大人しいファーティマ。ワークショップでは他の元気な女の子達の甲高い叫び声に飲み込まれそうになりながら、静かにだけど自分なりに一所懸命参加しようとするファーティマ。そして、私と目が会うと、いつもシャイな笑顔で私を歓迎してくれる。

そういう彼女が、2、3週間前あたりからぴたりと来なくなった。欠席が2、3回続いたところで、心配になってソーシャルワーカーのガーダに様子を見に行くようにお願いすると、父親が姿を消してしまったという話。もともと貧しいファーティマの家庭が、父親の失踪によって1銭も収入がなくなり、ピンチに追い込まれていた。

私も慌てて家庭訪問してみた。家の中に通されると、ファーティマのお母さんが非常にかすれた声で私を迎え入れてくれた。彼女は2週間前から声が出なくなり、その後何をしても一向に声が戻らないという。多分、生活のストレスから来る症状なんじゃないかな。子どもたちも笑顔で迎え入れてくれるけど、みんな以前会った時よりなんだか痩せ細ってしまっていた風に思えた。

父は出てく時に母に250NIS(約7千円)を渡したという。このお金も6人家族だと2週間でなくなり、それからは家の中に一銭もなくなってしまった。幸い、家の中には国連に供給されていた小麦粉がまだ残っていたから、パンを焼くことは出来るが、その他の食べ物は全て、たまに近所の人からのお裾分けに限る。


 天井の水漏れ

訪問した日、今日食べたものは?と聞くと、「パンとホンモス(ヒヨコマメのペースト)」という。冷蔵庫を覗かしてもらうと、ガラガラ。入っていたものはさっき言っていたパンとホンモス、そして別のご近所さんに分けてもらった果物が少々入っているだけだった。お肉や乳製品は愚か、お野菜でさえ2週間近くまともに口にしていないという。野菜が豊富で比較的安いパレスチナではほとんど考えられないことである。それも、5人も成長期の子どもを抱えている家庭で。

そういう子どもたちに「今、何が一番食べたい?」と聞いてみる。子どものことだから、「お菓子」とか「お肉」とか言ってくるかな、と思っていたら、みんな揃って両肩を上げ、「アヤ・ハジャ(なんでもいいや)」と答えられた。

ファーティマの家族にはさらなる問題が。今住んでいる家は祖父の名義のものだから、父の兄は、弟が一緒に住んでいないのであれば、その家にファーティマの家族がいる資格はない、という。ファーティマの家族は今までも何度も脅され、いつ追い出されてしまうか分からないで生活している。

 パレスチナでは家族に問題が起きれば、親戚などが家族の面倒を見るのがきまり。でも、ファーティマの家族の場合は、父方の親戚も、母方の親戚も、誰一人と手を差し伸べてくれない。

母がこういう話をしている間、ファーティマはずっと下の妹2人の遊び相手をしていた。一人の妹がファーティマの脚に体を巻きつけて離れようとしない。もう一人の妹はファーティマに何か見せたいのか、寝室の方にと必死に手を引っ張っる。静かな声で交互に話しかけ、そして、私のことを気にしてくれて時々私の方をちらり、ちらりと見てくれる。私と目が合うと、いつもと同じシャイな笑顔を向けてくれる。そういう彼女に笑顔を返そうとしながら、母から聞く現実と目の前に明るく振舞っているファーティマの姿とのギャップを頭の中で整理しようとし、自分はこの家族に一体何が出来るのか、真剣に悩む自分がいた。

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