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またまた侵攻:PART II 

< 2004年1月21日:ビラール >

今日もイスラエル軍のブラジル地区への侵攻が続いている。

夕方、スタッフのガッサンから突然の電話が掛かる。第2期生のビラールに何かがあった、とのこと。

ビラール、15才。彼は勉強がとにかく苦手で、文字の読み書きがほとんど出来ない。早くに学校を中退し、手に仕事を付けるために専門学校に通っていた。ワークショップでは悪ふざけをしてばかりで、いつも私たちスタッフに怒鳴り散らされていた。早く大人になりたくて仕方がなくて、唇の上に一生懸命口ひげを生やしていたけど、それはなんとまぁ情けないくらい細い毛の口ひげ。目がまん丸で表情があどけなくて、いつも年齢よりさらに若く見えてしまう。2年前にイスラエル兵に脚を撃たれた経験もありながらも、性格にどこかあどけなさが残っているようにいつも思える彼だった。



その彼が今回の侵攻で大怪我をしてしまった。

彼はシャリーフとモハマッド(という他の第2期生)と一緒に、家の近くの大通りを行き来していたブルドーザーの動きを覗きに行っていた。大通りと交差している小道に身を隠しながら、ブルドーザーが遠くへ行ったと思ったら大通りに近づいて様子を覗きにいっては、ブルドーザが自分達に近づいてくる姿を見たり、近くに銃声が聞えたら慌てて小道の奥に戻って行ったりしていた。

小道に沿って数メートルしか離れていない高い建物にイスラエル軍の狙撃兵が占拠していたことに、彼らは気付いていなかった。


ビラール

多分、ビラールは自分が撃たれたことに気づくこともなかったと思う。近づいて来るブルドーザーの姿から隠れて小道の奥に逃げていた時に、彼はその高い建物の上から狙撃兵に頭を撃たれた。その狙撃兵は逃げていくビラールの脚ではなく、腕でもなく、頭を狙い撃ちしたのだった。数メートルの距離から。

シャリーフとモハマッドはビラールが撃たれたその現場を見た。ビラールの頭から滴り落ちる血と脳みその一部も見たという。二人は撃たれたビラールを抱え上げて、なんとか乗合タクシーを見つけ、彼を車に乗せて病院に運んだ。その後の彼らの話によると、ビラールは声も上げずに撃たれたその場に倒れ、その後びくとも動かなかった。

彼はラファの病院に運ばれたが、あまりにも危険な状態だったので、救急車で慌ててガザ市のシファ病院に運ばれ、そこで緊急手術を受けることになった。

遠足の時、楽しそうにしているビラール。このあどけない笑顔がとても印象的。



ベッドに横たわるビラール

その晩、私は彼のお葬式に行った夢を見る。夢から覚めると彼の様態を聞くのが恐くて仕方がない。それでも、一日中、近くのモスクからアナウンスが流れてくる度、分からないアラビア語を無視しながらただひたすら彼の名前が聞えてくるかどうか、耳を済ませてしまう。地域から死者が出ると、それを最初に人々に知らせてくれるのがモスクからのアナウンスであるだから。


結局、モスクは彼の名前を殉教者として挙げることはなかった。彼は長時間の厳しい手術を乗り越え、何とか一命を取り留めた。でも、後頭部を撃たれた彼に今後どのような運命が待っているのか、まだ誰も知らない。

手術後のビラールは今もまだ昏睡状態のまま。ブラジル地区内の高い建物にたてこもっていたイスラエル兵は逃げていく彼の頭を狙い撃ちした。

イスラエル軍は次の日の午前6時に撤退したという。



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