トレッキング(TREKKING)

Annapurna Trekネパールのヒマラヤ山脈から、タライ平野に至る地形の複雑さは、トレッキングをする者にとってどれを選んでよいか困るほどの幅広さとスケールの大きさを誇っている。もちろんそれは何を目的とするかで、どのコースを選ぶのかは変わってくるが、その際に、経験を積んだ旅行社で相談する事が大切である。そして、気候や途中での食糧事情、宿泊施設の状況などを詳しく調べておく事が必要である。コースは、かなり難しい高山ルートから、カトマンズ盆地内の簡単なものまで、数え切れないほど設定されている。しかし、どのルートを選んだとしても、途中の地元の人たちとふれあう事が出来、人々の生活や文化・伝統を味わう事が出来るだろう。

アンナプルナ: ネパールでもっともポピュラーなトレッキングのルートはアンナプルナ山域にある。高原の草地、竹林、バラエティに富んだ樹木など、さまざまな植物を楽しむ事が出来るし、その中で暮らす、野生の動物や鳥たちの姿も垣間見る事が出来るだろう。いくつかあるルートの中で、ベスト・スリーは、次の通りである。それぞれ片道一週間以上かかるルートである。(1)アンナプルナの東側のマナン地域、(2)カリガンダキ沿いにジョムソンに至るルート(3)そして、1と2を合わせ、5360メートルのトラン・ラ峠を越えるアンナプルナ周回コース、である。このルートは最低でも三週間の日程を組む必要がある。

ソルクンブとエヴェレスト: エヴェレスト山域として知られるクンブ地域は、シェルパ族と神秘的なイェティ(雪男)のふるさととしても知られている。このルートは、ソル郡のジリを出発点として、5450メートルにあるエヴェレストのベース・キャンプに至る往復三週間はかかるものである。途中の上り下りがかなり多いので、レベルとしてはハイレベルなコースである。途中の上りを合計すると一万メートルは登るといわれている。

多くのトレッカーはソルからの一週間の徒歩を避けて、飛行機で直接ルクラの飛行場まで飛ぶルートを選ぶ事が多い。ルクラからナムチェ・バザールまでは一日から二日のコースである。しかし、飛行機は春と秋には非常に混雑するのでチケットを手に入れるのが難しい事が多い。また、天候によって後れたりキャンセルされる事も考慮に入れておく必要がある。ナムチェ・バザールから上の方には四つの谷があり、その上りはアンナプルナ山域での上りよりは楽かもしれないが、高度が高い事に注意する必要がある。

Helambu Langtang Trek カトマンズの北: ランタン−ヘランブ−ゴサイクンド地域はカトマンズから比較的容易に行けるコースである。それぞれのルートは一週間から十日でカバーする事が可能である。三週間で三つのルートを全部まわる事も出来る。しかし、その場合には高度の高い峠を越えなければならない。ヒマラヤの眺望は、アンナプルナやクンブほどよくはないが、それでも美しい眺めは忘れられないであろう。また、他の二地域よりもトレッカーも少ないし、土地の人々もより人なつっこさを残している。。

どのルートでも、高い峠を除けば、食事と宿泊の心配はない。それにしても出発前に、自分の行くルートの詳細について確認しておく必要はある。

西ネパールの新しいルート: 最近トレッキングに開放されたルートにシェイ−ポクスンド国立公園のルートがある。飛行機でドゥナイ(Dunai)まで飛んで、そこから一週間弱歩くと、ネパール側に張り出してきているチベット高原の縁に到達する。他の地域とは違った高原の景色を楽しむ事が出来る。この地域に住む人々はチベット、シェルパ系に近い人々である。このルートの難易度は例えばエヴェレスト・ベースキャンプほど困難ではない。まだ開発されていない、秘境のおすすめコースである。

ララ国立公園内のララ湖は、最近開放された西ネパールのもう一つの新しいトレッキング・ルートである。ジュムラ(Jumla)の飛行場から歩いて数日で緑豊かな森林の中に広がる青々としたララ湖に行く事が出来る。この地域には人も余り住んでいないし、まだ人間がほとんど触れていない、本当の意味での自然の美しさを味わう事の出来るルートである。

東ネパールのルート: アルン(Arun)川とマカルー・ベース・キャンプのルートは、たくさんあるトレッキング・ルートの中でも、一番ワイルドかもしれない。途中に施設がないので、食料とテントを自分で持っていく必要がある。ルートは、アルン川を北上して、チベットとの国境近くまで行き、そこから東に行ってマカルーの麓に至るルートである。マカルーに近づくに連れて文明から切り離された経験が出来るだろう。

さらに東に新しく開発されたのがカンチェンジュンガの麓のルートである。ここにはまだ原生林が残されており、その保護のためにネパール政府はこのルートはグループのトレッキングだけに開放している。ここも誰も人の住んでいない地域を歩くルートである。もしこのルートをトレッキングするなら、是非、自然環境を守ってほしい。無神経な人間が入り込めば、この地域は容易に破壊されてしまうから。

景色を見るだけでないトレッキング 残念な事にたくさんのトレッカーが雪を頂いたヒマラヤは見るがネパールの一番魅力的なものを見逃している。それはネパールの人々である。ネパールの中間山地やヒマラヤの麓のトレッキングはネパールのユニークな文化を経験するわくわくするようなものである。例えば、タンセンからドルパタン(Dhorpatan)に至るルートやゴルカからトゥリス(Trisuli)に至るルートでは興味深いネパールの山村の暮らしぶりを間近に見る事が出来る。

注意事項として、一人でトレッキングする事はお勧めできない。また、ネパール国内の経験を積んだトレッキング・エージェントを利用する事をお勧めする。混み合った宿ではなく、静かなテントに泊まる事が出来るし、食事の準備も心配しなくてすむ。また重い荷物も任せる事が出来る。優れたガイドは危険を避ける事が出来るし、何よりも、途中の人々や生活習慣、歴史、地質などについて知識豊富でいろいろ教えてもらえるから。

トレッキングのルートを選ぶ時は、天候を考慮に入れる事を忘れてはならない。一般的にいって、秋は10月と11月、春は3月と4月がベストである。この時期は雨や雪がほとんど降らないし、空気がよく澄んでいる。夜もそれほど寒くはならない。12月から2月にかけては、低地では涼しいので低地でのトレッキングが最適である。高地は寒さが厳しく往々にして雪で閉ざされることがある。春は、低地では暑くなり、空気が霞んでしまう事が多い。しかし、高地では、しゃくなげなどの野生の花が咲きほこり、とても美しい。夏のモンスーンの時期は雨が多いが、その分トレッカーが少ないし、高原ではヤクやシカを見る事が出来る。何よりもみずみずしい緑が美しい季節である。

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