マウンテン・フライト

ただ息を呑んで沈黙してしまう経験はそれほどある訳ではないが、世界一の山と出会うマウンテン・フライトを経験した人はまさしく、そんな経験をするのだ。ネパールの観光の一番人気のあるコースの一つがこのマウンテン・フライトである。現在4社がヒマラヤの雪を頂いた峰を見物する遊覧飛行を定期的に運行している。

マウンテン・フライトは老若男女誰にでも喜ばれる。ネパールでの滞在の時間が限られていたり、体力的に自信がなかったりしてトレッキングに行けない旅行者にとっては、わずか一時間の間にヒマラヤのパノラマを楽しめる便利で快適なフライトである。また、トレッキングでヒマラヤを楽しんできた人にとっても、空の上から、別な視点でヒマラヤを「征服」した気分になれるのが、このフライトのおもしろい所であろう。

早朝、カトマンズを離陸した飛行機は高度を上げつつ、向きを東に取る。すぐに、太古の昔からそびえているヒマラヤが視界には飛び込んでくる。

左手の遥か向こうにゴサイタン(Gosaithan)別名シシャ・パングマ(Shisha Pangma)が8013メートルの雄姿を見せる。そのすぐ右手には、雪に覆われた数字の8を横たえたような姿のドルジェ・ラゥパ(Dorje Lakpa) (6,966 メートル)が見える。そのまた右に、カトマンズ盆地から浮かび上がるようにプルビ−ギャチュ(Phurbi-Ghyachu)がある。

飛行機は更にヒマラヤに近づいていく。その次に見えてくるのが高さは5933メートルと小ぶりであるが独立峰で目立つ、まだ未登峰のチョバ−バマレ(Choba-Bhamare)である。その次が形の美しさもさる事ながら、宗教的にも重要なガウリ・シャンカール(Gauri Shanker)。シヴァ神とその妻のガウリはこの峰を守っているといわれている。標高7134メートル。1979年までは登山家の挑戦をを寄せ付けなかった。マウンテン・フライトの間に見られる山の中でも鋭く特に目立つ山である。

飛行機はさらに東へ向かう。東ヒマラヤの雄大な峰が続く。7023メートル、台地状の山メルンツェ(Melungtse)。チュギマゴ(Chugimago)6297メートルは、未登峰である。ヌンブー(Numbur)6956メートルは空に盛り上がる胸の形をしている。これはソルクンブのシェルパの人たちにミルクを出していると信じられている。カリョルン(Karyolung)6511メートルは真っ白な峰で、日の出の光に照り輝く姿は美しい。チョ−オユ(Cho-Oyu)は、世界第8位の高峰である。8201メートルの姿は飛行機から見るととりわけ美しい。

ギャチュンカン(Gyachungkang)7952メートルは登るのが極めて困難な山といわれている。その右にプモリ(Pumor)7161メートルがある。次第にエヴェレストに近づいていくとヌプツェ(Nuptse)7855メートルがある。その名前はエヴェレストの西にあるので、「西の峰」の意である。そしてエヴェレスト(8,848 m)に到着する。ネパール語で「サガルマータ(Sagarmatha)」また、チベット語では「チョモランマ(Chomolungma)」と呼ばれている。エヴェレストについては多くを語る必要がないほどよく知られて山であるが、実際にマウンテン・フライトで眼前にそびえる姿を見ると、やはり地球上で一番高い地点、その不思議さを感じてしまうのである。

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